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株式会社ファインデックス(3649)

決算期: 12月 / 会計基準: 日本基準 / 分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-08-13

この記事の要点

テーマ「医療・介護の現場DXを担うSaaS企業」では、選定基準に部分的に当てはまる比較対象として掲載しています。

この記事の財務数値は、すべて連結・日本基準です。決算期は12月で、「FY2025」は2025年12月期(2025年1〜12月)を指します。金額は決算短信の百万円表示(百万円未満切り捨て)に従います。文中では 実績(開示された過去の数値)、会社予想・会社計画(会社が公表した見通し)、独自計算・独自推計(本記事が開示数値から計算した値)を区別して書きます。分析日(2026年10月17日)時点で最新の開示は、2026年12月期の中間決算(2026年8月13日公表)です。

要点の詳細

事業概要・ビジネスモデル

ファインデックスは1985年設立のソフトウェア会社で、東証プライム市場に上場しています。2025年12月末の連結従業員数は354名です。子会社にフィッティングクラウド株式会社、持分法適用会社にEMC Healthcare株式会社があります(会社説明資料)。報告セグメントは次の3つです。

  1. 医療ビジネス(FY2025外部売上高5,691百万円、構成比93.1%): 医療機関向けのシステムの開発・販売とコンサルティングです。主力製品は、医療機関のDXを支援する画像ファイリングシステム「Claio」、文書作成システム「DocuMaker」、診療記事記載システム「C-Note」です。2026年の中間決算では、診療所向け電子カルテ「REMORA」も主力製品に挙げています。オンプレミス型が中心ですが、病院向けクラウドサービス「PiCls」シリーズや、生成AIで医療文書の作成を支援する「CocktailAI」(子会社フィッティングクラウド)など、クラウド型の製品も増やしています。
  2. 公共ビジネス(同355百万円、構成比5.8%): 自治体・公的機関向けのSaaS型ソリューション「DocuMaker Office」(公文書管理・電子決裁)です。2026年6月末時点で、自治体向けパッケージは累計66件、医療機関向けパッケージは累計14件が稼働しています。総利用者数は約4万9,000人で、サービス開始以来の解約は0件です(会社説明)。
  3. ヘルステックビジネス(同63百万円、構成比1.0%): ウェアラブル型の視線分析型視野計「GAP」「GAP-screener」の販売と、2025年11月に立ち上げた医療データプラットフォーム事業です。当社は2025年9月30日、次世代医療基盤法にもとづく「認定医療情報等取扱受託事業者」に認定されました。医療機関の診療データを匿名加工・仮名加工し、製薬会社や研究機関に提供する事業です。
セグメント別売上高(実績と会社計画)単位: 百万円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: FY2024・FY2025は決算短信セグメント情報の外部顧客への売上高(千円表示)を百万円未満切り捨てで表示したため、合計は連結売上高と1〜2百万円ずれる。FY2026〜FY2030は「成長戦略と株主還元方針 2026-2030」説明資料のセグメント別売上高予測(会社計画)で、FY2026の合計6,210百万円は会社予想の連結売上高6,209百万円と1百万円異なる(資料記載値のまま)。

出典: 株式会社ファインデックス 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) セグメント情報 (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス「成長戦略・株主還元方針 2026-2030」の策定に関するお知らせ(説明資料を含む) (2026-10-17参照)

顧客基盤について、会社は大規模医療機関308施設、中小規模医療機関438施設、診療所・その他1,500施設、公共セクター68施設に導入していると説明しています。視野計の累計販売台数は213台です(2026年2月の「成長戦略と株主還元方針 2026-2030」説明資料)。

収益は、システムの導入・更新時に計上する一時的な売上(フロー収益)と、保守・クラウド利用料などのストック型の売上に分かれます。会社は「成長戦略と株主還元方針 2026-2030」説明資料で、ストック収益比率を2025年に33.3%と開示し、2030年に40.0%以上に高める目標を掲げています(会社開示・会社計画。ストック収益はメンテナンス・サポートを含む会社定義)。つまり、FY2025の売上の約3分の2は導入・更新時の一時的な売上です。

なお、2026年の中間決算短信にある「ストック型収益が売上高の30%を超え」という記述は、≪医療ビジネス≫の説明のうち、診療所向け電子カルテ「REMORA」のリプレイス需要に触れた段落の中にあります。対象範囲はREMORAを中心とする一部の事業に限られると読め、全社や医療ビジネス全体の比率を示すものではありません。全社の比率としては、上記の33.3%(会社定義)を参照しています。

売上・利益・キャッシュフローの構造

売上高の推移(連結)単位: 百万円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 12月決算。FY2025は2025年1〜12月期。決算短信サマリーの百万円表示(百万円未満切り捨て)。FY2022はFY2023決算短信の前期欄、FY2024はFY2025決算短信の前期欄から取得した。FY2026は2026年2月12日公表の会社予想で、2026年8月13日の中間決算時点でも修正はない。

出典: 株式会社ファインデックス 2021年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照)

売上高はFY2021の4,968百万円から、FY2025には6,109百万円に増えました(実績)。ただし、毎年増えたわけではありません。FY2022は4,541百万円で、前期比8.6%の減収でした(実績)。大規模病院のシステム更新には周期があり、更新の時期が集中する年とそうでない年で売上が振れます(更新周期の具体的な年数は、確認した開示資料には記載がありません)。会社はFY2026について「大規模病院のシステム更新サイクルの谷間」にあたると説明し、医療ビジネスの売上高をFY2025の5,691百万円から5,451百万円に減らす計画を立てています(会社計画)。それでも連結の売上高は6,209百万円(前期比+1.6%)と、ほぼ横ばいの会社予想です。公共ビジネスとヘルステックビジネスの増収で医療ビジネスの減収を補う前提です。

営業利益と営業利益率(連結)単位: 百万円(営業利益率は%)

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 営業利益率は、決算短信の百万円表示(百万円未満切り捨て)の営業利益÷売上高で算出し、小数第2位を四捨五入した。FY2021〜FY2025は決算短信記載の売上高営業利益率と一致する。FY2026は会社予想(売上高6,209百万円、営業利益1,829百万円)から算出した。

出典: 株式会社ファインデックス 2021年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照)

営業利益はFY2021の920百万円からFY2025には1,790百万円に増え、営業利益率は18.5%から29.3%に上がりました(実績)。売上高が減ったFY2022にも、営業利益は前期比+11.7%の増益でした。FY2025には売上総利益率が65.2%(FY2024は60.8%)に上がっています(独自計算)。会社は、利益率の高いサービスの拡大と、仕入高の減少による原価率の低下を理由に挙げています。販売費及び一般管理費の売上高比率は、FY2024の34.7%からFY2025は35.9%に上がりました(独自計算)。人材投資が増えたためです。

セグメント別に見ると、利益を生んでいるのは医療ビジネスです。

セグメントFY2024 売上高FY2024 セグメント利益FY2025 売上高FY2025 セグメント利益FY2025 利益率(独自計算)
医療ビジネス5,4941,6535,6911,89533.3%
公共ビジネス28910135510930.9%
ヘルステックビジネス56△22963△214—

(単位: 百万円。決算短信セグメント情報の千円表示を百万円未満切り捨て。医療ビジネスのFY2024利益率は30.1%、独自計算)

ヘルステックビジネスは、FY2024・FY2025ともに2億円強の営業損失でした(実績)。医療ビジネスの利益で、新規事業の先行投資を支える構造です。

2026年1〜6月(中間期)の売上高は3,145百万円(前年同期比+0.6%)、営業利益は888百万円(同7.0%減)でした(実績)。会社予想に対する進捗率は、売上高50.7%、営業利益48.6%です。セグメント別では、医療ビジネスが2,908百万円(+1.8%)、セグメント利益945百万円(+1.0%)と増収増益でした。一方、公共ビジネスは前年にあった大型案件の反動で売上高172百万円(△29.1%)、セグメント利益27百万円(△77.6%)に落ち込みました。ヘルステックビジネスは、医療データプラットフォーム事業の売上が加わって売上高64百万円(+150.2%)、営業損失は85百万円(前年同期は105百万円の損失)でした。親会社株主に帰属する中間純利益は560百万円(△18.2%)です。投資有価証券評価損106百万円を特別損失に計上したことが主な要因です。

営業キャッシュフローと親会社株主に帰属する当期純利益(連結)単位: 百万円

注: 決算短信サマリーの百万円表示(百万円未満切り捨て)。FY2024の営業CFが大きいのは、売上債権の減少(373百万円の収入)が加わったため。FY2024の投資CF(△2,434百万円)には投資有価証券(債券)の取得2,128百万円が含まれるため、本グラフでは投資CFとフリーCFを示していない。

出典: 株式会社ファインデックス 2021年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社ファインデックス 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照)

過去5期のうち、営業CFが親会社株主に帰属する当期純利益を上回ったのはFY2021・FY2024・FY2025の3期です。FY2022(営業CF 693百万円、純利益722百万円)とFY2023(同842百万円、1,059百万円)は、営業CFが純利益を下回りました(実績)。FY2025の営業CFは1,652百万円で、純利益1,256百万円の約1.3倍でした(独自計算)。設備投資は主に市場販売目的のソフトウェアです。FY2025の無形固定資産の取得は259百万円、有形固定資産の取得は36百万円で、ソフトウェア償却費(269百万円)と同程度です。営業CFから両者を差し引いた額は1,355百万円でした(独自計算)。重い設備投資を必要としない事業です。

FY2024の投資CF(△2,434百万円)には、投資有価証券(債券)の取得2,128百万円が含まれています(実績)。FY2025末の投資有価証券は2,217百万円、現金及び預金は1,678百万円で、有利子負債はありません(実績)。

ROIC・資本効率

会社開示のROE(自己資本当期純利益率)は、FY2021 19.4%、FY2022 19.2%、FY2023 23.9%、FY2024 22.3%、FY2025 22.8%でした(実績)。自己資本比率が約80%と高く、財務レバレッジに頼らずにROE 20%前後を保っています。会社は「ROE20%超水準を中長期で維持・向上」を掲げています(会社計画)。

本業に投じている資本に対する利益率も見ます。ROICを次の前提で推計しました(独自推計)。

この前提で、FY2025のNOPATは約1,282百万円、期末の投下資本は約1,544百万円となり、ROICは約83%です。FY2024は同じ方法で約74%です(いずれも独自推計)。投資有価証券を事業に必要な資産とみなさず差し引いているため、高めに出ている点に注意が必要です。それでも、本業はわずかな資本で利益を生む、資本効率の高い構造だといえます。投資有価証券の中身(債券・株式の内訳)は決算短信からは確認できず、検証の途中です。

競争優位と競争環境

医療ビジネスの競争優位として、開示から確認できる点は次の3つです。

  1. 乗り換えコストの高さ: 画像ファイリングや文書作成のシステムは、電子カルテや院内の各部門システムと連携して日々の診療で使われます。乗り換えには、データの移行と職員の再教育が必要です。会社は利用継続率99%以上(FY2025)、解約率は創業以来2.0%以下と説明しています(会社説明)。
  2. 大規模病院での導入実績: 大規模医療機関308施設に導入しています(会社説明)。会社は、大学病院・基幹病院を含む400施設超への導入実績を、医療データ事業で質の高い診療データを集める基盤と位置づけています。
  3. 収益性: 医療ビジネスのセグメント利益率は、FY2024 30.1%、FY2025 33.3%でした(独自計算)。厳しい経営環境にある病院が多いなかでも、利益率は上がっています。

競合他社とのシェア比較や価格水準について、分析日時点で一次情報による比較材料は確認できていません。医療データの利活用事業では、レセプト(診療報酬明細)データや健診データを扱う既存のデータ事業者が先行しています。会社はこれらの市場を約600億円と推計しています(会社調べ、2026年2月12日)。一方、電子カルテデータは、次世代医療基盤法の認定を受けた事業者でなければ扱いにくい「深層データ」です。会社は、法規制による参入障壁が高いことを強みとして挙げています(会社説明)。この強みが収益として実証されるかどうかは、今後の売上の推移で確かめる必要があります。

成長ドライバーと市場規模

会社計画(「成長戦略と株主還元方針 2026-2030」)では、セグメント別の売上高を次のように見込んでいます。

連結では、売上高をFY2026の6,209百万円からFY2030に8,520百万円(年平均+8.2%)、営業利益を1,829百万円から3,220百万円(年平均+15.2%)に伸ばす計画です(会社計画)。FY2030の営業利益率は37.8%になります(独自計算)。売上の増加額2,311百万円(FY2026→FY2030)のうち1,330百万円、つまり約6割をヘルステックビジネスが占めます(独自計算)。計画の達成は、医療データ事業の立ち上がりにかかっています。

医療データの市場規模について、会社はレセプト・ヘルスケアデータ市場を約600億円、電子カルテデータの利活用で生まれる市場を「将来的に数千億円」としています(会社説明)。ただし、後者の数字の算定根拠は開示されていません。

経営者・資本政策

代表取締役社長は相原輝夫氏です。

株主還元は、2026年2月に方針を大きく変えました。それまでは配当性向30%を目安にしていましたが、配当性向50%に引き上げ、配当の下限をDOE(株主資本配当率)8.5%に設定しました(会社公表)。1株当たり配当は、FY2021 8.5円、FY2022 9.5円、FY2023 13.0円、FY2024 15.0円、FY2025 22.0円と増えてきました(実績)。FY2026は27.0円の予想で、FY2030に48.0円を計画しています(会社計画)。

FY2025には、配当金の支払い408百万円に加えて、自己株式を1,001百万円取得しました(実績)。株主還元の合計は親会社株主に帰属する当期純利益(1,256百万円)の約112%にあたります(独自計算)。取得した自己株式は、譲渡制限付株式(RS)や従業員向け株式給付信託(J-ESOP)に活用する方針です(会社説明)。M&Aについては「成長の必須要素とせず既存・新規事業への投資を優先」し、シナジーが見込める場合に限って機動的に対応するとしています(会社説明)。

将来シナリオ(条件付き)

以下は、会社計画と開示実績から組み立てた条件付きのシナリオです。

現在の市場評価との比較

2026年10月16日の終値910円をもとにした指標は次のとおりです(独自計算)。

2026年6月末の現金及び預金は2,471百万円、2025年12月末の投資有価証券は2,217百万円で、合計は時価総額の約2割にあたります(独自計算。基準日が異なる点に注意)。

株価の年初来高値は983円(2026年1月8日)、年初来安値は717円(2026年5月20日)です。PER約17倍という水準は、FY2026の会社予想(営業利益+2.2%)のように利益がほぼ横ばいの状態が続く場合と、会社計画のように年+15%の営業増益が続く場合とで、評価の意味が大きく変わります。現在の株価がどちらのシナリオをどの程度織り込んでいるかは、本記事では判断していません。判断の材料になるのは、医療データ事業の売上の推移です。

主要リスクと反証条件

主要リスク

  1. 病院のシステム更新サイクルと経営環境: 医療ビジネスの売上は大規模病院の更新時期に左右されます。会社自身も「厳しい経営環境に置かれている病院が多い」と認めています。病院の投資が先送りされると、更新需要が後ろにずれる可能性があります。
  2. 新規事業の立ち上がり遅れ: 視野計GAPの販売台数は、FY2025の58台から2026年1〜6月は1台に減りました(実績)。医療データ事業は2025年11月に始まったばかりで、売上の実績は半期分しかありません。会社計画は、増収分の約6割をヘルステックビジネスに頼っています。
  3. 規制・データの取り扱い: 医療データ事業は次世代医療基盤法の認定が前提です。認定の維持、個人情報の安全管理、制度改正が事業の継続性に直結します。
  4. 公共ビジネスの案件依存: 2026年1〜6月は、前年の大型案件の反動で売上高が△29.1%となりました(実績)。規模が小さいため、案件の有無で業績が振れやすい事業です。
  5. 株主還元と成長投資の両立: 配当性向50%とDOE下限8.5%の方針のもとで、新規事業への投資を続けられるかどうか。FY2025は総還元額が純利益を上回り、純資産は前期末から減りました(5,607百万円→5,467百万円、実績)。

反証条件(以下が起きた場合、本記事の見立てを見直す)

出典