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株式会社カナミックネットワーク(3939)

決算期: 09月 / 会計基準: 日本基準 / 分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-08-10

この記事の要点

テーマ「医療・介護の現場DXを担うSaaS企業」の中心企業です。

この記事の財務数値は、すべて連結・日本基準です。決算期は9月で、「FY2025」は2025年9月期(2024年10月〜2025年9月)を指します。金額は決算短信の百万円表示(百万円未満切り捨て)に従います。文中では 実績(開示された過去の数値)、会社予想・会社計画(会社が公表した見通し)、独自計算・独自推計(本記事が開示数値から計算した値)を区別して書きます。分析日(2026年10月17日)時点で、2026年9月期の通期決算はまだ公表されていません。そのため、最新の実績は第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月)です。

要点の詳細

事業概要・ビジネスモデル

カナミックネットワークは、東証プライム市場に上場しています(2016年上場)。セグメントは次の3つです。

  1. 医療・介護クラウドプラットフォーム事業(FY2025外部売上高3,582百万円、構成比65.1%): 中核は「カナミッククラウドサービス」です。介護保険制度が始まった2000年から提供しています。介護請求・業務管理システムに、医師・看護師・ケアマネジャー・介護士などの多職種が連携する機能を組み合わせています。自治体と組む地域連携(例: 東京都の「東京都多職種連携ポータルサイト」)にも力を入れています。サービスは次の3つに分かれます。
    • カナミッククラウドサービス: FY2025の売上高は2,997百万円(前期比+5.1%)。会社はストック型のビジネスだと説明しています。
    • プラットフォームサービス: 同474百万円(+11.9%)。介護事業者のホームページ制作、広告、人材マッチングなどです。
    • その他サービス: 同111百万円(+26.8%)。大口顧客向けのカスタマイズ開発などです。
  2. 健康寿命延伸事業(同1,187百万円、構成比21.6%): 子会社の株式会社アーバンフィットが、24時間営業のフィットネスジム「URBAN FIT24」の直営とフランチャイズを運営しています。2022年に子会社化しました(2022年6月30日みなし取得)。店舗数は27店舗です(2026年9月期第2四半期の決算説明会での会社説明)。
  3. ソリューション開発事業(同730百万円、構成比13.3%): Ruby言語によるWebサービス開発の株式会社Ruby開発(2023年8月取得)と、シンガポールでバックエンドシステムの導入支援を行うTHE WORLD MANAGEMENT PTE LTD(2024年11月取得)で構成されます。
セグメント別売上高(外部顧客への売上高)単位: 百万円

注: 決算短信のセグメント情報(千円表示)を百万円未満切り捨てで表示。セグメント間の内部売上高を除く外部顧客への売上高。FY2024の報告セグメント区分はFY2025決算短信に記載された前期分を使用した。

出典: 株式会社カナミックネットワーク 2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) セグメント情報 (2026-10-17参照)

クラウドの利用者数について、会社は2026年3月時点で有料ユーザーID 24万7,000、無料ユーザー12万9,000と説明しています。FY2025の決算説明時点では、有料22万、無料11万7,000でした。導入事業所数は5万2,000超です(FY2025決算説明時点)。会社は、無料ユーザーを将来の有料化(他社システムからの乗り換え)の候補と位置づけています。

AIについては「AI100-Vision」として、介護帳票の作成支援などのAI機能を順次リリースしています。会社の説明では、AI機能はFY2025まで無償で提供し、FY2026から課金を始めました。価格・導入数・AI関連売上の金額は、分析日時点で開示されていません。

売上・利益・キャッシュフローの構造

売上高の推移(連結)単位: 百万円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 連結・日本基準。決算期は9月(FY2025=2025年9月期)。百万円未満切り捨て。FY2026は2025年11月13日公表の会社予想で、2026年8月10日の第3四半期決算短信時点でも修正なし。FY2023の大幅増収には、2022年6月末みなし取得の株式会社アーバンフィット(フィットネスジム)の通年寄与と、2023年8月末みなし取得の株式会社Ruby開発の連結開始が含まれる。FY2025には2024年11月取得のTHE WORLD MANAGEMENT PTE LTDの連結開始が含まれる。

出典: 株式会社カナミックネットワーク 2022年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2024年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2026年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照)

売上高は、FY2021の2,080百万円からFY2025の5,500百万円に増えました(実績)。4年間の年平均成長率は約27.5%です(独自計算)。ただし、これにはM&Aによる増加が含まれます。特にFY2023の+49.7%は、アーバンフィットの通年寄与が主な要因です。FY2026の会社予想は6,350百万円(前期比+15.4%)で、2026年8月10日の第3四半期決算短信でも修正されていません。

営業利益と営業利益率(連結)単位: 百万円(営業利益率は%)

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 営業利益率は、決算短信の百万円表示(百万円未満切り捨て)の営業利益÷売上高で算出し、小数第2位を四捨五入した。会社開示の売上高営業利益率はFY2021が40.5%、FY2022が38.5%で、本グラフとは0.1pt異なる(会社は千円単位で計算)。FY2026は会社予想(売上高6,350百万円、営業利益2,050百万円)から算出。

出典: 株式会社カナミックネットワーク 2022年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2024年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2026年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照)

営業利益は、FY2021の841百万円からFY2025の1,606百万円に増えました(実績)。営業利益率は、FY2021の40.4%から、FY2023に29.3%へ下がりました。その後は28.7%(FY2024)、29.2%(FY2025)と、29%前後で推移しています。グラフの営業利益率は、百万円表示の営業利益を売上高で割った値です。会社は千円単位で計算しているため、FY2021(会社開示40.5%)とFY2022(同38.5%)では0.1ptの差があります。FY2026の会社予想は営業利益2,050百万円、営業利益率32.3%です。

利益率の水準は、セグメントの構成で決まります(独自計算。セグメント利益÷内部売上高を含むセグメント売上高)。

セグメントFY2024 セグメント利益(百万円)利益率FY2025 セグメント利益(百万円)利益率
医療・介護クラウドプラットフォーム1,36940.6%1,49941.7%
健康寿命延伸665.8%15613.2%
ソリューション開発468.8%779.8%

主力のクラウドは40%台の利益率を保っています。一方、ジムと受託開発は利益率が1桁〜10%台です。M&Aで売上を増やした分だけ、連結の利益率が下がったと解釈できます。FY2025には、ジム事業の利益が前期比137.4%増えるなど、買収した事業の利益率も改善しています。

2026年9月期 第3四半期累計(実績): 売上高4,627百万円(前年同期比+15.2%)、営業利益1,504百万円(同+29.5%)でした。営業利益率は32.5%で、前年同期の28.9%から上昇しています(独自計算)。セグメント別の動きは次のとおりです。

通期予想に対する進捗率は、売上高72.9%、営業利益73.4%です(独自計算)。前年同期(FY2025第3四半期累計の通期実績に対する比率)は売上高73.0%、営業利益72.4%で、ほぼ同じ水準です。会社予想を達成するには、第4四半期(2026年7〜9月)に売上高1,723百万円(前年同期比+16.2%)、営業利益546百万円(同+23.0%)が必要になります(独自計算)。

営業CF・投資CFと当期純利益(連結)単位: 百万円

注: 連結。百万円未満切り捨て。投資CFはマイナスが支出。FY2025の投資CFには連結範囲の変更を伴う子会社株式(THE WORLD MANAGEMENT PTE LTD)の取得による支出355百万円が含まれる。

出典: 株式会社カナミックネットワーク 2022年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2024年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社カナミックネットワーク 有価証券報告書 第24期(2024年9月期) 主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照)

営業CFは5期続けて当期純利益を上回っています(実績)。FY2025は営業CF 1,292百万円、当期純利益1,111百万円でした。投資CFは△743百万円で、そのうち355百万円がTHE WORLD MANAGEMENTの取得による支出です。営業CFと投資CFを足した簡易的なフリーCFは、FY2025で549百万円です(独自計算)。M&Aとジムの出店で、投資CFは年によって大きく変わります。

ROIC・資本効率

会社が開示するROE(自己資本当期純利益率)は、FY2025で26.2%でした(FY2024も26.2%)。2026年6月末の現金及び預金は4,095百万円で、借入金は合計374百万円(1年内返済予定を含む)です。実質的には無借金の状態です。

ROIC(独自推計): 会社はROICを開示していません。そこで、次の前提で概算しました。

この前提だと、ROICは約56%です。のれん(FY2025末793百万円)を投下資本に含めても、高い水準です。現預金を差し引かずに(純資産+有利子負債)で割ると、約21%になります。事業そのものの資本効率は高く、資本効率を押し下げているのは厚い手元資金です。会社はVision 2035で、10年間の累計純利益の約7割(265億〜420億円)を成長投資とM&Aに充てる方針を示しています。今後の資本効率は、M&Aの規模と価格に左右されます。

競争優位と競争環境

会社の有価証券報告書は、主な強みとして次の2点を挙げています。

導入地域が1,420地域(人口3万人程度の中学校区単位、会社開示)に広がっていることは、地域単位で連携のネットワークができていることを示します。連携ネットワークは、参加する事業所が増えるほど価値が高まります。そのため、乗り換えを抑える方向に働くと考えられます(独自の解釈)。会社は、制度改正で処遇改善加算の対象が広がり、その算定要件である「ケアプランデータ連携」への対応が求められたことを、無料ユーザーが増えた理由として挙げています。

一方、有価証券報告書は、介護・医療分野のクラウドサービスには競合企業が複数存在し、新規参入も増える可能性があるとしています。2025年11月の決算説明会では、介護ソフト事業者の撤退が出ていて、今後1〜2年で乗り換え需要が増えるとの見方が示されました(会社の見方)。ただし、競合の個社名や市場シェアは、会社の開示からは確認できませんでした。

成長ドライバーと市場規模

会社が挙げる成長ドライバーは、次の4つです。

  1. 有料ユーザーの増加とAI課金: 有料ユーザーIDは22万(FY2025決算説明時点)から24万7,000(2026年3月時点)に増えました(会社説明)。FY2026から始めたAI機能の課金が、ユーザー当たり単価を押し上げるかどうかが焦点です。
  2. 制度改正への対応: 介護保険法・介護報酬は、原則3年に1度見直されます。改定のたびにシステムの改修需要が生まれます。対応に遅れた他社からの乗り換えを取り込む余地があります。
  3. URBAN FIT24の出店: 直営とフランチャイズで出店を続けています。会社は、リアル店舗を健康データ事業の基盤と位置づけています。
  4. M&Aと海外展開: 会社は、ヘルスケア、保険サービス、ITサービス、リアル店舗の4領域でM&Aを探していると説明しています。また、総務省の実証事業(シンガポールでの医療・介護・健康情報共有システムの展開)を2026年3月に完了しました。

会社は市場規模の数値を開示していません。有価証券報告書では、75歳以上人口の増加などにより医療・介護分野の社会保障給付費が増え、関連するシステム市場も拡大が続くとの見方を示しています(会社の見方)。

経営者・資本政策

代表取締役社長は山本拓真氏です。創業者の山本稔氏が取締役会長を務めています。有価証券報告書(2024年9月期)では、山本稔氏への依存を事業リスクの1つとして挙げています。同報告書の時点で、取締役9名のうち4名が山本姓の取締役(会長・副会長・社長・副社長)で、社外取締役は3名でした。

大株主(2024年9月30日時点、有価証券報告書)は、株式会社SHO(28.82%)、山本拓真氏(14.09%)、山本洋子氏(2.96%)、山本稔氏(1.90%)、山本景士氏(1.53%)などです。山本姓の4名の個人保有を合計すると20.48%になります(独自計算)。

株主還元の方針は、配当性向30%以上と、毎年の増配です(会社方針)。年間配当は、FY2023が5.50円、FY2024が6.50円、FY2025が7.50円で、FY2026の予想は9.00円です(予想配当性向31.2%)。このほか、抽選によるJCBギフトカードの贈呈と、URBAN FIT24の利用券を株主優待として提供しています。

Vision 2035(会社計画)の主な数値は次のとおりです。

項目2035年9月期の目標
売上高200億〜300億円
営業利益80億〜120億円
営業利益率40%
10年間の累計株主還元115億〜180億円
10年間の累計成長投資・M&A265億〜420億円

将来シナリオ(条件付き)

以下は、本記事が会社開示から組み立てた条件付きの見方です。会社予想・会社計画とは別のものです。

現在の市場評価との比較

2026年10月16日の終値は503円でした(株探)。自己株式を除く発行済株式数47,457,294株で計算すると、時価総額は約238.7億円です(独自計算)。

指標(独自計算)値前提
PER約17.4倍FY2026会社予想EPS 28.87円
PBR約4.4倍2026年6月末の純資産5,365百万円
配当利回り約1.8%FY2026予想配当9.00円
EV/営業利益約9.9倍2026年6月末のネットキャッシュ約3,637百万円、FY2026会社予想営業利益2,050百万円

ネットキャッシュは、2026年6月末の現金及び預金4,095百万円から、借入金374百万円とリース債務83百万円を差し引いた値です。

この評価は、FY2026会社予想の営業利益の伸び(+27.6%)や、Vision 2035の年約14〜18.5%成長と並べて読む必要があります。現在の株価が前提にしている成長率を逆算するには、割引率などの仮定が必要です。本記事では、その推計は行っていません。

主要リスクと反証条件

リスク内容反証条件(この見方を見直すサイン)
主力クラウドの成長鈍化FY2025のカナミッククラウドサービスの売上成長率は+5.1%でした四半期ベースで再び1桁前半の伸びに戻る
AI課金の不発AI機能の価格・導入数が開示されておらず、効果を検証できませんFY2026以降、クラウド売上の伸びが加速しない、またはAI関連の数値の開示が続かない
M&Aによる利益率・資本効率の低下Vision 2035では、累計265億〜420億円の成長投資・M&Aを想定しています大型買収の後に営業利益率が30%を下回り、のれんの減損が出る
制度改正介護報酬改定による顧客の経営悪化や、システム対応の負担があります改定後に解約や他社への乗り換えが増える
ガバナンス創業家の保有比率が高く、取締役会にも創業家が多くいます少数株主に不利な資本取引や関連当事者取引が出る
ソリューション開発事業第3四半期累計でセグメント損失に転じました通期でも赤字が続き、のれんの減損につながる
情報セキュリティ多数の要介護者・患者の個人情報を扱っています重大な情報漏えいやシステム障害が起きる

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