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株式会社ギミック(475A)

決算期: 03月 / 会計基準: 日本基準 / 分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-08-13

この記事の要点

テーマ「医療・介護の現場DXを担うSaaS企業」では、選定基準に部分的に当てはまる比較対象として掲載しています。

この記事の財務数値は、すべて単体・日本基準です(当社に子会社はありません)。決算期は3月で、「FY2026」は2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)を指します。金額は百万円未満切り捨てで表示しています。文中では 実績(開示された過去の数値)、会社予想・会社目標(会社が公表した見通し)、独自計算・独自推計(本記事が開示数値から計算した値)を区別して書きます。分析日(2026年10月17日)時点で最新の決算開示は、2027年3月期第1四半期決算(2026年8月13日公表)です。当社は2025年12月19日に東証スタンダード市場に上場したばかりで、上場企業としての開示はまだ3四半期分しかありません。

要点の詳細

事業概要・ビジネスモデル

ギミックは2003年12月、神奈川県川崎市で地域情報メディアの会社として設立されました。2006年に医療情報サイト「ドクターズ・ファイル」の前身を立ち上げ、2009年に現在の名称に改めています。本社は東京都渋谷区で、代表取締役社長兼CEOは創業者の横嶋大輔氏です。報告セグメントは医療特化型プラットフォーム事業の1つだけです(上場申請書類)。

主なサービスと収益区分は次のとおりです(上場申請書類、2026年3月期決算説明資料)。

収益区分主なサービス内容・料金FY2026 売上構成比
ストック収入ドクターズ・ファイル医師への取材記事を掲載する医療情報サイト。月額3.5万円〜70.7%
リピート収入頼れるドクター地域ごとに年1回発行する医療情報マガジン。紹介記事1ページ28.0万円〜21.0%
その他収入ホスピタルズ・ファイル、ドクターズ・ファイル エージェント(医療職の人材紹介)、CLINICO(人事評価システム)、レジタス(予約管理)、メディパシー(院内情報共有アプリ)など月額・年額の利用料や紹介手数料8.3%

「ドクターズ・ファイル」は、記者が医師に取材して書いた紹介記事を、患者が比較・検索できるようにしたサイトです。会社は、掲載情報を厚生労働省の医療広告ガイドラインに沿って作り、受診を誘導するおすすめ(レコメンド)を一切しない点を、一般的な集患メディアとの違いとして挙げています。これまでに取材した医療機関は累計約3万院です(2025年9月時点、解約済みを含む)。

収益の中心は「ドクターズ・ファイル」の月額課金です。会社は、医師の掲載が増えると患者の利用が増え、利用が増えると掲載したい医師が増えるという「ネットワーク効果」を事業の本質と説明しています。「頼れるドクター」は「ドクターズ・ファイル」の顧客にあわせて売る紙のマガジンで、FY2026は36版を発行しました(前期は32版)。前期の取引先が今期も取引した割合(収入ベースの継続率)は75.7%です(FY2026、会社開示)。

売上・利益・キャッシュフローの構造

売上高の推移(単体)単位: 百万円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 単体・日本基準(子会社なし)。3月決算で、FY2026は2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)。千円表示の開示値を百万円未満切り捨てで表示。FY2021〜FY2023は会社計算規則にもとづく数値で、金融商品取引法にもとづく監査の対象外(上場申請書類の注記)。FY2027は2026年5月15日公表の会社予想(2026年8月13日時点で修正なし)。

出典: 株式会社ギミック 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(2025年11月17日)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照) / 株式会社ギミック 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月15日) (2026-10-17参照) / 株式会社ギミック 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月13日) (2026-10-17参照)

売上高は、FY2021の2,092百万円からFY2026の3,842百万円まで5期続けて増えました(実績)。会社は、FY2027の会社予想4,120百万円が達成されれば17期連続の増収になると説明しています。ただし、増収率は下がってきています。前期比の増収率は、FY2022が+18.3%、FY2023が+12.6%、FY2024が+15.6%、FY2025が+10.2%、FY2026が+8.2%でした(独自計算)。FY2027の会社予想は+7.2%です。

営業利益と営業利益率(単体)単位: 百万円(営業利益率は%)

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 営業利益率は、百万円表示(百万円未満切り捨て)の営業利益÷売上高で算出し、小数第2位を四捨五入した。FY2025・FY2026は決算短信・決算説明資料記載の売上高営業利益率(7.7%・12.1%)と一致する。FY2021〜FY2023の営業利益は、確認した開示資料に数値の記載がないため掲載していない(経常損益は475a-ordinary-incomeを参照)。FY2027は会社予想(売上高4,120百万円、営業利益300百万円)から算出。

出典: 株式会社ギミック 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(2025年11月17日)損益計算書 (2026-10-17参照) / 株式会社ギミック 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月15日) (2026-10-17参照) / 株式会社ギミック 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月13日) (2026-10-17参照)

営業利益は、FY2024の151百万円からFY2026の465百万円に増え、営業利益率は4.7%から12.1%に上がりました(実績)。売上総利益率はFY2024・FY2025が81.1%、FY2026が81.9%で、ほぼ一定です(独自計算・会社開示)。利益率が上がったのは、販売費及び一般管理費の伸びが売上高の伸びより小さかったためです。販管費の売上高比率は、FY2024の76.4%からFY2025は73.4%、FY2026は69.8%に下がりました(独自計算)。FY2026の増収額290百万円に対して、営業利益は193百万円増えています(会社開示)。

会社は、原稿制作の工程に自社開発のAIを導入した効果を説明しています。2025年4月から、取材記事の制作に必要な日数が平均7日から2日に短くなったとしています(上場申請書類)。ただし、AI導入の効果を費用の金額で示した開示はありません。

経常損益の推移(単体)単位: 百万円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 千円表示の開示値を百万円未満切り捨て(損失は絶対値を切り捨て)。会社は、FY2021の経常損失は賞与の計上方法を支給ベースから発生ベースへ変更したこと(実質3回分の賞与を計上)、FY2023の経常損失はドクターズ・ファイル事業のシェア拡大に向けた多額の広告宣伝費によると説明している。FY2026の経常利益には上場関連費用20百万円・株式交付費12百万円(営業外費用)が含まれる。FY2027は会社予想。

出典: 株式会社ギミック 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(2025年11月17日)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照) / 株式会社ギミック 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月15日) (2026-10-17参照)

FY2021〜FY2023の営業利益は、確認した開示資料に数値の記載がないため、経常損益で過去の収益性を見ます。FY2021は経常損失20百万円、FY2022は経常利益93百万円、FY2023は経常損失107百万円でした(実績)。会社は、FY2021の損失を賞与の会計処理の変更(支給時の計上から発生時の計上へ変え、実質3回分の賞与を計上)、FY2023の損失をドクターズ・ファイルのシェア拡大に向けた多額の広告宣伝費によるものと説明しています。広告宣伝費を増やすと利益が大きく振れることは、FY2027の会社予想を読むうえで参考になります。

FY2027の会社予想は、売上高4,120百万円(+7.2%)、営業利益300百万円(△35.6%)、当期純利益232百万円(△24.5%)です。会社は、成長投資を除いた営業利益を620百万円と見込み、そこからマーケティング投資140百万円と人的投資180百万円、合計約3.2億円を差し引いて300百万円としています(2026年3月期決算説明資料)。

2026年4〜6月期(2027年3月期第1四半期)の実績は、売上高971百万円、営業利益116百万円、四半期純利益102百万円でした(実績)。営業利益率は11.9%です(百万円表示からの独自計算。決算短信の千円表示では116,622÷971,426=12.0%)。会社予想に対する進捗率は、売上高23.6%、営業利益38.9%です(会社開示)。会社は、「頼れるドクター」の発行が下期に偏るため売上高の進捗が低く見えると説明し、成長投資はこれから本格化するとして通期予想を据え置いています。会社が参考値として示した前年同期(FY2026第1四半期)の売上高は925百万円、営業利益は114百万円です。前年同期比は売上高+4.9%、営業利益+2.2%です。

キャッシュフローは次のとおりです(実績、単位: 百万円)。

項目FY2024FY2025FY2026
営業CF249212402
投資CF△17△22△30
財務CF△169△1281,249
期末の現金及び現金同等物3834442,066

FY2026の営業CFは402百万円で、当期純利益307百万円の約1.3倍でした(独自計算)。有形・無形固定資産の取得は合計29百万円にとどまります(実績)。設備投資の負担が小さい事業です。FY2026の財務CFには、上場時の株式発行による収入1,389百万円が含まれます。上場前の長期借入金は返済が進み、2026年6月末の借入金は82百万円です(実績)。

ROIC・資本効率

会社開示のROE(自己資本当期純利益率)は、FY2025が31.2%(上場申請書類)、FY2026が19.6%(決算短信)でした(実績)。FY2026に下がったのは、上場時の増資で自己資本が712百万円から2,421百万円に増えたためです。会社もコーポレート・ガバナンス報告書で、上場前は自己資本が限られていたことがROEを押し上げていたと説明しています。FY2027の会社予想の当期純利益232百万円を期首・期末の平均自己資本で割ると、ROEは約9%になります(独自推計。期末の自己資本は、期首の自己資本に会社予想の純利益を加えた額と仮定。配当は無配予想)。

本業に投じている資本に対する利益率も見ます。ROICを次の前提で推計しました(独自推計)。

この前提で、FY2026のNOPATは約329百万円、期末の投下資本は約460百万円となり、ROICは約71%です。FY2025は同じ方法で約39%です(いずれも独自推計)。現金をすべて事業に不要な資産とみなして差し引いているため、高めに出る点に注意が必要です。ただ、固定資産はFY2026末で354百万円と小さく、売掛金も買掛金や未払金などの流動負債でおおむね賄われています。少ない資本で利益を生む構造であることは確かです。

競争優位と競争環境

開示から確認できる競争優位は次の3つです。

  1. 取材記事の蓄積: 累計約3万院の取材実績があります(会社開示)。会社は、医師への取材で得た暗黙知の蓄積が、ほかの集患メディアとの模倣障壁だと説明しています。
  2. 解約率の低さ: 「ドクターズ・ファイル」の月次解約率(解約や契約変更で減ったMRRの割合の直近12カ月平均)は、FY2024第4四半期の0.77%からFY2027第1四半期の0.83%まで、0.72〜0.83%の範囲で推移しています(会社開示)。会社は「1.00%以下で安定」と説明しています。
  3. 単価の上昇: 顧客1件あたりの月額課金額(ARPA)は、FY2024第1四半期の28.9千円からFY2027第1四半期の30.5千円に上がりました(会社開示)。
「ドクターズ・ファイル」の顧客数とARR(期末)単位: 件(ARRは百万円)

注: 会社定義のKPI。顧客数は各期末時点の「ドクターズ・ファイル」の顧客数。ARRは各期末月のMRR(「ドクターズ・ファイル」の月額収入)×12。FY2024・FY2025のARRは上場申請書類の千円表示(2,360,264千円・2,602,274千円)を百万円未満切り捨て。FY2026・FY2027 1Q(2026年6月末)は決算説明資料の百万円表示。FY2027 1Qは四半期末の値で、通期の期末値ではない。

出典: 株式会社ギミック 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(2025年11月17日)p.14「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」(FY2024・FY2025の顧客数・ARR) (2026-10-17参照) / 株式会社ギミック 2026年3月期 決算説明資料(2026年5月15日) (2026-10-17参照) / 株式会社ギミック 2027年3月期 第1四半期決算説明資料(書き起こし)(2026年8月13日) (2026-10-17参照)

ただし、顧客の純増ペースは落ちています。期末の顧客数はFY2024が6,743件、FY2025が7,288件(上場申請書類(Ⅰの部)p.14「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」)、FY2026が7,594件(FY2026決算説明資料)でした(会社開示)。新規に獲得した顧客は、FY2025が1,205件(同p.14の収益構造図に「うち新規導入1,205件」と記載、会社開示)、FY2026が1,088件(FY2026決算説明資料の四半期別新規顧客数を独自に合計)です。新規獲得数から純増数を差し引いた「減った顧客数」は、FY2025が660件、FY2026が782件と増えています(独自推計)。FY2026の782件は、期首の顧客数の約10.7%にあたります。新規の獲得が減り、解約などによる減少が増えたため、純増数は545件から306件に減りました。ARRの伸びも、FY2025の+10.3%からFY2026は+5.5%に鈍っています(独自計算)。2026年6月末の顧客数は7,640件で、3カ月間の純増は46件です(独自計算)。

競合については、具体的な競合他社とのシェアや価格の比較を一次情報で確認できていません。会社は、クリニックの53.7%が駅看板や電柱広告などの屋外広告に予算を使っているという自社調査(「開業医白書2025」)をもとに、屋外広告の市場を年1,100億円と推計し、その予算を「ドクターズ・ファイル」に振り向けることを成長戦略の柱にしています(会社推計)。会社はまた、生成AIによる検索を、信頼性に欠ける情報を出しても責任を負わない存在として対比し、責任ある医療情報の提供で差別化すると説明しています。

成長ドライバーと市場規模

会社が示す市場と成長余地は次のとおりです(会社開示)。

会社は中期経営計画を公表していませんが、「2030年3月期に、2027年3月期の3倍の営業利益(約9億円)を目指す」との目標を示しています(会社目標)。これはFY2027の会社予想300百万円からの年平均で約+44%、FY2026実績の465百万円からの年平均で約+18%の増益にあたります(独自計算)。会社は「Jカーブによる減益は今期のみ、翌期以降は増収増益を想定」としています。

経営者・資本政策

創業者の横嶋大輔氏は、個人で631,800株(12.06%)、議決権の過半数を持つ資産管理会社の株式会社Y-Bloodを通じて1,800,000株(34.38%)を保有しています(2026年3月31日時点、コーポレート・ガバナンス報告書)。合計は約46.4%です(独自計算)。上場前は、Y-Bloodを含めて発行済株式の92.07%を保有していました。取締役は5名で、うち2名が独立社外取締役です。

上場時の資金調達は、公募による手取り概算1,047百万円と、オーバーアロットメントに関連する第三者割当増資(上限344百万円)です。会社は資金使途として、採用・人件費(FY2026 26百万円、FY2027 374百万円、FY2028 527百万円)、広告宣伝・マーケティング費(FY2027 60百万円、FY2028 211百万円)、研究開発費(FY2027 29百万円、FY2028 49百万円)、借入金の返済を挙げています(訂正目論見書)。つまり、手元の現金の多くは、今後2年ほどの成長投資にあてる予定の資金です。

配当は上場前から実施しておらず、FY2027も無配の予想です。会社は、持続的な事業成長と財務の健全性の両立が確保された段階で株主還元を検討するとしています。また、上場申請時点で新株予約権による潜在株式が280,700株(当時の発行済株式数の7.18%)ありました(上場申請書類)。

将来シナリオ(条件付き)

以下は、会社予想・会社目標と開示実績から組み立てた条件付きのシナリオです。

現在の市場評価との比較

2026年10月16日の終値630円をもとにした指標は次のとおりです(独自計算)。

株価は、上場直後の2026年1月9日に年初来高値1,246円をつけたあと、2026年8月4日に年初来安値558円まで下がりました。分析日時点の株価630円は、上場時の公開価格1,150円を下回っています。CEOは第1四半期の決算説明で、市場からの評価は「芳しいものではありませんでした」と述べています。

EVで見た倍率が低いのは、時価総額に対して手元の現金が大きいためです。ただし、その現金の多くは、上で見たように成長投資にあてる予定の資金です。現在の株価が、成長投資の成功と失敗のどちらをどの程度織り込んでいるかは、本記事では判断していません。判断の材料になるのは、今後の四半期ごとの顧客の純増数と月次解約率です。

主要リスクと反証条件

主要リスク

  1. 成長投資の回収: FY2027に約3.2億円の成長投資を行う会社予想です。顧客獲得の効率が上がらなければ、減益がFY2028以降も続く可能性があります。FY2023には広告宣伝費の増加で経常損失を計上した実績があります。
  2. 単一サービスへの依存: 売上高の70.7%が「ドクターズ・ファイル」です(FY2026)。会社自身も、特定サービスへの依存を事業等のリスクに挙げています。
  3. 検索環境の変化: 「ドクターズ・ファイル」はウェブ検索からの流入に頼っています。会社は、大手検索サイトのアルゴリズム変更をリスクに挙げています。生成AIによる検索が広がった場合の影響は、開示からは確認できません。
  4. 医療広告の規制: 医療法や医療広告ガイドラインの改正・解釈の変更で、記事の作り方や営業方法を変える必要が生じる可能性があります。
  5. 創業者への依存とガバナンス: 創業者が資産管理会社とあわせて約46%を保有し、事業戦略の決定でも中心的な役割を担っています。CFOは上場申請時の坂本俊孝氏から、2026年5月時点では臼井啓太氏に代わっています。
  6. 流動性: 時価総額が約33億円と小さく、株価が大きく振れやすい銘柄です(年初来高値1,246円、安値558円)。

反証条件(以下が起きた場合、本記事の見立てを見直す)

出典