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東洋合成工業株式会社(4970)

決算期: 03月 / 会計基準: 日本基準 / 分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-08-07

この記事の要点

テーマ「半導体サプライチェーンの隠れた優良企業」の関連企業(比較対象)です。

この記事の財務数値は、特に断りがない限り単体(非連結)・日本基準です。同社には連結子会社がありません。決算期は3月で、「FY2026」は2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)を指します。金額は決算短信の百万円表示(百万円未満切り捨て)に従い、会社の説明資料から引用した値だけ億円で示します。文中では 実績(開示された過去の数値)、会社予想・会社計画(会社が公表した見通し)、独自計算・独自推計(本記事が開示数値から計算した値)を区別して書きます。分析日(2026年10月17日)時点の最新の実績は2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)で、2026年8月7日に開示されました。

要点の詳細

事業概要・ビジネスモデル

東洋合成工業は1954年に医薬品用化学製品の製造を目的に日本アセチレン化学工業として設立され、1961年に現在の商号に変わりました。1981年に感光性材料の製造を始めています(有価証券報告書の沿革)。現在は東証スタンダード市場に上場しています。本社は東京都台東区で、主な拠点は千葉工場(千葉県香取郡東庄町、感光材)、市川工場と高浜油槽所(千葉県市川市、化成品・タンクターミナル)、淡路工場(兵庫県淡路市、高純度溶剤)です。FY2026末の従業員数は972人でした(有価証券報告書)。

報告セグメントは2つです(FY2026、外部顧客への売上高、実績)。

セグメント売上高構成比(独自計算)セグメント利益主な製品・サービス
感光性材料事業26,417百万円63.0%1,051百万円半導体用感光性材料、液晶表示装置用感光性材料、電気二重層材料など
化成品事業15,538百万円37.0%2,617百万円半導体・電子材料向け高純度溶剤、香料材料、化学品のタンク保管
セグメント別売上高(外部顧客向け)単位: 百万円

注: 外部顧客への売上高。FY2022の決算短信は千円単位表示のため、百万円未満を切り捨てた。化成品事業には別途セグメント間の内部売上高(FY2026は374百万円)がある。

出典: 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)セグメント情報(2023年5月12日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)セグメント情報(2024年5月10日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)セグメント情報(2026年5月8日) (2026-10-17参照)

感光性材料事業: 同社の感光材は、レジストメーカーが作るフォトレジストの原料として使われます(有価証券報告書の事業等のリスク)。最終製品はKrF・ArF・EUVといった露光方式ごとのレジストで、同社は先端品(ArF・EUV向け)の生産能力を増強してきました。同社は自らレジストを売るのではなく、レジストメーカーに素材を納める立場です。主要顧客として開示されているのは信越化学工業で、FY2026の売上高は6,889百万円(売上高の16.4%)でした。この売上は感光性材料事業と化成品事業の両方にまたがります(決算短信)。

化成品事業: 3つの事業からなります。(1) 半導体の製造工程で使う高純度溶剤、(2) 香料材料、(3) 液体化学品のタンク保管(タンクターミナル)です。FY2026は、高純度溶剤が先端ロジックとメモリ向けに伸びました。香料材料は米国の関税措置の影響で減収、タンクターミナルは契約率が高い水準で推移しました(決算短信)。事業ごとの売上内訳は開示されていません。

地域: FY2026の売上高のうち日本向けが29,202百万円(69.6%、独自計算)、中国・台湾向けが6,200百万円、北米向けが3,014百万円でした。会社は海外直接売上高の比率を30.4%としています(有価証券報告書)。日本向けが多いのは、国内のレジストメーカーに原料を納め、それが海外の半導体工場に届く流れのためと考えられます(推測であり、会社は説明していません)。

売上・利益・キャッシュフローの構造

売上高の推移(単体)単位: 百万円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: FY表記は3月期決算の期末年(FY2026=2026年3月期)。連結子会社がないため単体(非連結)の数値。FY2022(2022年3月期)から「収益認識に関する会計基準」等を適用しており、FY2022の決算短信では前期比増減率が記載されていない。FY2027は2026年8月7日に上方修正した会社予想(5月公表時は47,500百万円)。

出典: 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2023年5月12日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2025年5月9日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月7日) (2026-10-17参照)

売上高は、FY2024に半導体市場の調整で31,956百万円(前期比−6.4%)に減ったあと、FY2025は38,665百万円(+21.0%)、FY2026は41,956百万円(+8.5%)と過去最高を更新しました(実績)。FY2022からFY2026の年率は+6.1%です(独自計算)。会社は、フォトレジスト市場の成長が中期経営計画の策定時の想定より約1年遅れ、計画期間中の売上の伸びが後ろ倒しになったと説明しています(決算説明会資料)。

営業利益と営業利益率(単体)単位: 百万円(営業利益率は%)

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 営業利益率は営業利益÷売上高で算出し、小数第2位を四捨五入した。FY2022〜FY2026は決算短信記載の売上高営業利益率と一致する。FY2027は2026年8月7日修正後の会社予想(営業利益5,800百万円÷売上高50,000百万円)。5月公表時の当初予想は営業利益5,000百万円・売上高47,500百万円(利益率10.5%)。

出典: 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2023年5月12日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2025年5月9日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月7日) (2026-10-17参照)

営業利益率は、FY2023の14.5%からFY2026の8.7%へ下がりました(実績)。売上が増えたのに利益率が下がったのは、増産のための投資が先行したためです。FY2026は売上総利益率が23.4%から21.6%に下がりました(会社資料)。会社は、新設備と生産情報システムの稼働開始で減価償却費や人件費などが25.7億円増え、販売増と増産の効果(計21.3億円)を上回ったと説明しています(決算説明会資料)。減価償却費はFY2024の2,898百万円から、FY2026には5,084百万円へ増えました(キャッシュフロー計算書)。

利益率の低下は、2つのセグメントで逆向きの動きをしています。

セグメント利益とセグメント利益率単位: 百万円(利益率は%)

実績・シナリオを含みます(薄色・点線は実績以外)。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です

注: セグメント利益は営業利益ベースで、両セグメントの合計は損益計算書の営業利益と一致する(全社費用の配賦後)。利益率は本記事の独自計算で、セグメント利益÷セグメント売上高(セグメント間の内部売上高を含む「計」)。感光性材料事業は内部売上高がないため外部顧客向け売上高と同じ。化成品事業の分母はFY2022 12,874、FY2023 13,609、FY2024 12,908、FY2025 15,175、FY2026 15,913(百万円)。FY2022は千円単位表示から百万円未満を切り捨てた。

出典: 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)セグメント情報(2023年5月12日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)セグメント情報(2024年5月10日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)セグメント情報(2026年5月8日) (2026-10-17参照)

セグメント利益率(独自計算)FY2022FY2023FY2024FY2025FY2026
感光性材料事業16.0%15.9%11.1%8.3%4.0%
化成品事業10.3%12.2%10.5%14.0%16.4%

感光性材料事業は、売上高がFY2022の20,574百万円からFY2026の26,417百万円へ増えた一方、セグメント利益は3,297百万円から1,051百万円へ減りました(実績)。2024年9月に完成した第4感光材工場の能力増強(投資額約120億円)の償却が始まったことが主因です(決算説明会資料)。化成品事業は高純度溶剤の伸びで利益率を上げ、FY2026の利益(2,617百万円)は過去最高でした(実績)。

直近の回復: 利益の底はFY2026の上期でした。

半期別の売上高と営業利益単位: 億円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 会社の決算説明資料に記載された億円単位(小数第1位)の値。上期・下期の合計は四捨五入の関係で通期の値と0.1億円ずれる場合がある。FY2027は2026年8月7日修正後の会社予想で、上期の営業利益35.0億円には前期の増産に伴う一過性の増益要因5.1億円と、第2四半期に見込む在庫評価益4億円が含まれる(会社説明)。

出典: 東洋合成工業 2026年3月期 決算説明会資料(2026年5月15日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期 決算補足説明資料(2026年8月7日) (2026-10-17参照)

営業利益はFY2026上期の9.3億円から、下期は27.3億円に回復しました(会社資料)。FY2027第1四半期(2026年4〜6月)は売上高12,086百万円(前年同期比+32.4%)、営業利益1,932百万円(同+386.4%)で、ともに四半期として過去最高でした(実績)。第1四半期の営業利益率は16.0%です(独自計算)。ただし、この利益には一過性の増益要因が511百万円含まれます。前期に増産した製品の原価差額が前期末の在庫に含まれ、販売に伴って売上原価に反映されたものです(決算短信)。この要因を除くと、営業利益率は11.8%になります(独自計算)。

セグメント別に見ると、第1四半期の感光性材料事業は売上高7,382百万円、セグメント利益1,052百万円でした。前年同期の233百万円の損失から黒字に転じています(実績)。会社は「増強した設備の投資回収が本格化」と説明しています(会社資料)。

会社は2026年8月7日に、FY2027の予想を次のとおり修正しました(会社予想)。

FY2027 会社予想当初(2026年5月)修正後(2026年8月)
売上高47,500百万円50,000百万円
営業利益5,000百万円5,800百万円
営業利益率10.5%11.6%
当期純利益3,200百万円3,800百万円
1株当たり当期純利益403.19円478.79円

修正後の予想は、上期の営業利益を3,500百万円、下期を2,300百万円としています(会社予想)。下期の利益が上期より少ないのは、上期の一過性の増益要因(前期の増産に伴う5.1億円と、第2四半期に見込む在庫評価益4億円、計9億円)がなくなり、原燃料の高騰や増産に向けた固定費の増加を見込むためです(会社資料)。下期の会社予想は売上高25,500百万円、営業利益2,300百万円で、営業利益率は9.0%になります(独自計算)。

キャッシュフロー

キャッシュフローの推移単位: 百万円

実績・シナリオを含みます(薄色・点線は実績以外)。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です

注: フリーCFは本記事で営業CF+投資CFとして計算した(会社の決算説明資料と同じ定義)。投資CFには有形・無形固定資産の取得のほか、定期預金の払戻や助成金の受取などを含む。

出典: 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2023年5月12日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2025年5月9日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日) (2026-10-17参照)

FY2024とFY2025は大型投資のため、営業CFと投資CFの合計(フリーCF)がマイナスでした(FY2025は−5,179百万円、独自計算)。投資が一巡したFY2026は投資CFが−4,874百万円に縮み、フリーCFは2,616百万円のプラスに戻りました(独自計算)。営業CFは7,490百万円で、過去5期で最大です(実績)。会社はFY2026を「投資回収フェーズ」への移行と位置づけ、借入金の返済を進めています(決算説明会資料)。

設備投資額・減価償却費・研究開発費単位: 億円

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: 会社の決算説明会資料に記載された億円単位の値。FY2023〜FY2027は中期経営計画「Beyond500」の期間で、5年間の設備投資額は累計327.6億円(FY2027は計画値を含む)。設備投資額は有形・無形固定資産の増加額ベースで、キャッシュフロー計算書の取得による支出とは一致しない。FY2027は2026年5月公表の計画値。

出典: 東洋合成工業 2026年3月期 決算説明会資料(2026年5月15日) (2026-10-17参照)

中期経営計画の5年間(FY2023〜FY2027)の設備投資額は、計画の「300億円規模」に対し累計327.6億円になる見込みです(会社資料、FY2027は計画値)。会社は、インフレで投資額が計画より増えたと説明しています。FY2027の設備投資は44.6億円の計画で、減価償却費(53.0億円)を下回ります(会社計画)。

ROIC・資本効率

ROEとROIC(独自推計)単位: %

実績・シナリオを含みます(薄色・点線は実績以外)。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です

注: ROEは決算短信記載の自己資本当期純利益率。ROICは本記事の独自推計で、税引後営業利益(営業利益×(1−30.6%)、30.6%は仮定の実効税率)÷期末投下資本(純資産+借入金+リース債務)。期末投下資本はFY2025が53,385百万円(純資産24,831+有利子負債28,554)、FY2026が54,599百万円(純資産27,452+有利子負債27,147)。FY2027は修正後の会社予想営業利益5,800百万円を使い、投下資本をFY2026末と同額と仮定した試算。期首・期末平均ではなく期末残高を使っているため、投資が先行した年は低めに出る。

出典: 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2023年5月12日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2025年5月9日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月7日) (2026-10-17参照)

ROE(自己資本当期純利益率)はFY2022の24.0%からFY2026の10.3%へ下がりました(実績)。利益率の低下と、利益の積み上げによる自己資本の増加(FY2022末16,061百万円→FY2026末27,452百万円)が重なったためです。

本記事では、ROICを「税引後営業利益÷期末投下資本」として推計しました(独自推計)。前提は次のとおりです。

この前提で、ROICはFY2025が5.3%、FY2026が4.7%です。FY2027は、修正後の会社予想の営業利益(5,800百万円)が実現し、投下資本がFY2026末と同じだった場合で7.4%です(独自推計)。期首と期末の平均ではなく期末の値を使っているため、投資が先行した年は低めに出ます。

ROEが10%台を保っているのに対しROICが5%前後にとどまるのは、有利子負債による財務レバレッジが効いているためです。FY2026末の借入金とリース債務の合計は27,147百万円(独自計算。有価証券報告書は有利子負債を27,167百万円と記載)、現金及び預金は3,683百万円でした。ネット有利子負債は23,464百万円で、純資産の約0.85倍にあたります(独自計算)。自己資本比率は2026年6月末で41.9%です(実績)。

競争優位と競争環境

会社が示す強み: 有価証券報告書は、同社の事業が「長年にわたって当社が蓄積してきた他社の製品や製造方法との差別化技術とノウハウ」に基づくと説明しています。具体的には、(1) 化学増幅型レジスト用材料の精密合成技術、(2) 不純物の金属を減らす品質管理と製造プロセスの管理、(3) 研究開発から製品化までを工場に隣接した環境で短期間に行う体制です(有価証券報告書の研究開発活動)。中期経営計画では「世界No.1ダントツ企業」を目指すとしています。ただし、同社の製品別の市場シェアは開示されていません。本記事でもシェアは確認できていません。

素材メーカーとしての立場: 同社はレジストの原料メーカーで、最終的なレジストの採用を決めるのは半導体メーカーとレジストメーカーです。先端品では製品の認定(顧客による品質評価)に時間がかかります。FY2026の感光性材料事業では「先端材料の量産拡大に向け、製品認定・サンプル出荷が進捗」とされています(決算説明会資料)。一度認定されると採用が続きやすい一方、顧客が原料の調達先を変えたり内製に切り替えたりすると影響が大きい構造です。会社も、ファインケミカルメーカーや半導体・FPD業界の再編を事業リスクに挙げています(有価証券報告書)。

顧客の集中: 開示されている主要顧客は信越化学工業の1社です。FY2026の同社向け売上高は6,889百万円で、前期の5,160百万円から33.5%増えました(独自計算)。他の顧客の名前や比率は開示されていません。

化成品事業の性格: 高純度溶剤では、淡路工場の第2屋内充填所の稼働で、半導体向け高純度溶剤の充填所出荷能力が3倍になりました(決算説明会資料)。2026年7月には淡路工場の4群タンクヤードと第二屋外充填所(投資額17億円)が完成しています(2026年8月5日開示)。タンクターミナルは、化学品の保管という性格上、景気で荷動きが減ると影響を受けます。為替の影響は軽微と会社は説明しています(有価証券報告書)。

成長ドライバーと市場規模

会社の見方: 会社は、生成AIの普及に伴うデータセンター関連の需要で、半導体材料の需要が中長期的に拡大すると見ています。富士経済・富士キメラ総研のレポートをもとにした会社資料では、EUV・ArFを中心にフォトレジスト市場が2031年にかけて拡大する見通しを示しています(決算説明会資料。グラフからの読み取りになるため、本記事では数値を記載しません)。

供給能力: 同社は中期経営計画の期間中に次の設備を整えました(会社資料)。

設備完成投資額効果(会社説明)
千葉工場 感光材開発分析棟2024年5月約30億円開発・分析・品質評価の体制を強化
千葉工場 第4感光材工場の能力増強2024年9月約120億円ArF・EUV向け材料の生産能力1.8倍
淡路工場 第2屋内充填所―約10億円半導体向け高純度溶剤の充填所出荷能力3倍
淡路工場 4群タンクヤード・第二屋外充填所2026年7月17億円高純度溶剤の供給能力と安定供給体制を強化

さらに会社は、感光性材料で「新規感光材工場の建設準備」を進め、将来の事業用地を取得したとしています(有価証券報告書)。2026年3月には、兵庫県淡路市に事業拡張用地(土地24,315㎡)を取得しました(2026年3月26日開示、取得価額は非公表)。新しい感光材工場の場所・投資額・時期は、分析日時点で開示されていません。

成長の条件: 第4感光材工場の能力が埋まるまでは、販売数量の増加が固定費の吸収を通じて利益率を押し上げます。FY2027の会社予想の増益要因は、販売増が25.5億円、増産効果が9.0億円、費用増が−21.1億円でした(2026年5月時点の会社資料)。次の大型投資(新規感光材工場)を始めると、再び償却費が先行する局面に入る可能性があります。

経営者・資本政策

経営者と株主: 代表取締役社長の木村有仁氏は、2026年3月末時点で発行済株式(自己株式を除く)の13.79%を保有する筆頭株主です。木村姓の個人株主3人(木村有仁氏、木村愛理氏、木村正子氏)の合計は23.73%になります(有価証券報告書の大株主の状況から独自計算)。公益財団法人東洋合成記念財団も2.52%を保有しています。取締役会は6名(うち社外取締役2名)で、監査役会設置会社です。会社は2026年5月8日に、買収への対応方針(いわゆる買収防衛策)の継続を開示しました(会社ニュースリリース一覧)。

配当: 会社は安定配当を基本方針としています。年間配当はFY2023〜FY2024が40円、FY2025が45円(創業70周年の記念配当5円を含む)、FY2026が40円でした(実績)。FY2026の配当性向は11.8%です。FY2027は50円を予定しています(会社予想)。修正後の予想EPS(478.79円)に対する配当性向は10.4%です(独自計算)。自己株式の取得は、単元未満株の買取を除いて行っていません。

資本配分の特徴: 同社は利益の大半を内部に残し、借入金と組み合わせて設備投資に回してきました。中期経営計画では「機動的な設備投資を実現する財務体質の強化」を掲げ、有価証券報告書では借入金比率を下げる方針を示しています。新規感光材工場の投資を、どの程度を借入でまかなうかは開示されていません。

将来シナリオ(条件付き)

以下は、本記事が前提を置いて整理したシナリオです。将来の業績や株価を予測するものではありません。

シナリオA: 修正予想どおりに推移した場合 FY2027の売上高50,000百万円、営業利益5,800百万円(営業利益率11.6%)が実現した場合、ROICは7.4%程度になります(独自推計、上記の前提)。この場合、営業利益は中期経営計画の目標(80億円)に届かないものの、FY2023の4,968百万円を上回り過去最高になります(会社予想)。

シナリオB: 感光材の稼働率がさらに上がった場合 先端材料の販売増が下期も続き、原燃料コストの上昇を販売価格の見直しで吸収できた場合、下期の営業利益率は会社予想(9.0%)を上回る可能性があります。参考として、FY2026第4四半期の営業利益は15.9億円、FY2027第1四半期は19.3億円でした(会社資料)。この水準が一過性の要因を除いても続くかどうかが、このシナリオの条件です。

シナリオC: 原燃料高と需要の調整が重なった場合 会社はFY2027の予想で、中東情勢に伴う原燃料・物流費の高止まりを「現在想定できる範囲で」織り込んでいます(会社資料)。原料価格がさらに上がり、販売価格への転嫁が遅れた場合や、AI向け以外の一般半導体向けの需要が弱まった場合、下期の利益は会社予想を下回る可能性があります。感光性材料事業は固定費が大きいため、売上の変動が利益に大きく響きます(FY2026上期に感光性材料事業のセグメント利益は−3.0億円でした)。

現在の市場評価との比較

株価は2026年10月16日終値で9,340円です(Yahoo!ファイナンス)。この株価をもとにした指標は次のとおりです(独自計算)。

指標値計算の前提
時価総額約74,129百万円自己株式を除く株式数7,936,738株(2026年6月末)
PER約19.5倍修正後の会社予想EPS 478.79円
PBR約2.57倍2026年6月末の純資産28,818百万円÷自己株式を除く株式数7,936,738株=1株当たり3,631円
配当利回り約0.54%会社予想の年間配当50円
EV/EBITDA約8.5倍EV=自己株式を除く時価総額74,129百万円+2026年6月末の借入金24,472百万円−現金及び預金3,728百万円(リース債務は含めず)。EBITDA=FY2027の会社予想営業利益5,800百万円+会社計画の減価償却費5,300百万円

株価は年初来で大きく動いています。2026年1月14日の7,160円から、FY2026の決算発表(5月8日)後の5月14日に19,310円まで上昇しました。その後は下落し、8月7日に業績予想を上方修正したものの、10月16日時点の株価は高値から約52%下にあります(独自計算)。この間の株価の動きについて、会社は理由を説明していません。本記事でも原因は特定できていません。

市場評価を読むうえでの論点は、次の2点です。

主要リスクと反証条件

主要リスク

  1. 顧客の集中: 信越化学工業向けの売上高がFY2026に16.4%まで上がりました。顧客の採用方針の変更や、レジスト業界の再編は、売上に直接響きます。
  2. 固定費の重さ: 減価償却費はFY2026に5,084百万円となり、営業利益(3,668百万円)を上回りました。需要が落ち込んで稼働率が下がると、利益が大きく減ります。FY2026上期の感光性材料事業は赤字でした。
  3. 原燃料価格と為替: 原材料と重油などの燃料は市況で価格が変わり、販売価格への転嫁が遅れると利益を圧迫します。FY2027の会社予想は1ドル=155円を前提としています(会社資料)。
  4. 有利子負債と金利: ネット有利子負債は純資産の約0.85倍です(FY2026末、独自計算)。支払利息はFY2025の213百万円からFY2026に321百万円へ増えました(実績)。会社も、有利子負債の比率が高いことと金利変動をリスクに挙げています。
  5. 在庫水準: 会社は事業継続計画(BCP)に基づき一定の製品在庫を持つ方針で、FY2026末の棚卸資産は11,710百万円(商品及び製品・仕掛品・原材料及び貯蔵品の合計、独自計算)でした。急な需要の落ち込みがあれば、在庫が運転資金を圧迫するおそれがあります(有価証券報告書)。
  6. 化学品の安全と規制: 化学工場とタンクターミナルを運営しており、事故や自然災害、化学物質規制の強化が事業に影響する可能性があります(有価証券報告書)。

反証条件(この分析の前提が崩れるサイン)

出典