半導体サプライチェーンの隠れた優良企業
生成AI向けの半導体投資は、露光装置や大手ウェーハメーカーのような「主役」だけでなく、成膜材料、プローブカード、検査用ソケット、再生ウェーハ、レジストの原料といった工程の「脇役」にも及んでいます。このページでは、そうした工程で独自の技術を持つ日本の中堅5社を取り上げ、選定基準をすべて満たすトリケミカル研究所と日本電子材料を中心企業に、基準に部分的に当てはまる山一電機・RS Technologies・東洋合成工業を比較対象に置きます。5社とも足元は増収で、次期の会社予想では5社中4社が前期比+19〜25%の増収を見込んでいます(会社予想、独自計算)。ただし、前回の調整局面での利益の落ち方、設備投資の局面、会社予想が置く下期の前提は企業ごとに大きく異なり、「AIの追い風を受ける企業群」として一括りにはできません。
今回の重要な発見
1. 同じ営業利益率24.7%でも、調整局面での利益の残り方は大きく違った
中心企業の2社は、直近通期の営業利益率がともに24.7%です(トリケミカル研究所は2026年1月期、日本電子材料は2026年3月期、実績)。ところが、半導体・メモリー市況が調整した前回の局面(2024年1月期/3月期)では、トリケミカル研究所の営業利益が前期比−44.4%(営業利益率17.3%)にとどまったのに対し、日本電子材料は−72.8%(同5.0%)まで落ち込みました。同じ局面で山一電機も−67.9%(同8.1%)でした(実績、各社の決算短信に記載された前期比)。
日本電子材料のプローブカードと山一電機のソケットは、顧客のチップごとに作る特注品で、顧客の新製品の立ち上げや検査設備の投資に需要が左右されます。日本電子材料は「国内工場の高い稼働率」を増益要因に挙げており(会社説明)、山一電機も売上の減少(−22.5%)に比べて利益が大きく減ったことから、固定費の比率が高い構造と考えられます(推定)。一方、トリケミカル研究所の材料は、顧客の生産工程で使われる消耗品です。この違いが利益の振れ幅の差につながったと考えられますが、品目別の数量・価格は開示されておらず、未検証の仮説です。
市場の評価を見ると、会社予想ベースのPERはトリケミカル研究所が約15.8倍、日本電子材料が約15.6倍とほぼ同じです(2026年10月16日終値、独自計算)。手元資金を差し引いたEV/営業利益(会社予想)では、トリケミカル研究所が約13.4倍、日本電子材料が約9.2倍(尼崎工場の未払い分を控除すると約10.4倍)と差があります(独自計算)。ただし、トリケミカル研究所は経常利益の18.0%を営業利益の外にある持分法投資利益が占めるため、EV/営業利益は高めに出ます。直近の利益率だけでは、次の調整局面で利益がどれだけ残るかは分からない、というのがこの比較の示すことです。
2. 調整局面で利益がほとんど減らなかったのはRS Technologies。ただし連結の数字がそれを見えにくくしている
同じ調整局面(2023年12月期)に、RS Technologiesの連結営業利益は前期比−8.6%にとどまり、営業利益率は22.9%を保ちました(実績、前期比は独自計算)。中核のウェーハ再生事業は2022〜2025年12月期の4期とも増収増益で、セグメント利益率は36.9〜40.6%でした(実績、独自計算)。会社は、不況期には顧客がコスト削減のために再生ウェーハを使う量を増やすと説明しています(会社の見解)。
それでも、連結の営業利益率は2022年12月期の26.1%から2025年12月期の18.6%に下がり、5社の中で4番目にとどまります。売上高の39.4%を利益率5%前後の「半導体関連装置・部材等」が、24.5%を当社持分39.1%の中国子会社GRITEKのプライムウェーハ事業が占めるためです(2025年12月期、独自計算)。ウェーハ再生事業は売上高の35.9%にすぎませんが、報告セグメント利益の63.7%を稼いでいます(独自計算)。さらに、当期純利益のうち親会社株主に帰属するのは74.1%(2026年12月期上期は65.6%)で(独自計算)、営業利益の成長がそのまま1株当たり利益の成長にはなりません。PBR約1.61倍、PERは約14.4倍と、5社の中で最も低い水準です(独自計算)。再生事業のセグメント利益率も2026年12月期上期に35.5%まで緩やかに下がっており(独自計算)、2028年に2025年の約1.72倍へ増やす生産能力を、利益率を保ったまま埋められるかが次の論点です。
3. 4社が大型投資に入る中、東洋合成工業だけが投資の回収局面に移りつつある
トリケミカル研究所(2029年1月期までの残り約122億円、2026年1月期の営業CFの約3年分)、日本電子材料(尼崎工場に約125億円)、山一電機(3年間で設備投資180億円)、RS Technologies(2026〜2028年に再生ウェーハ工場へ約405億円)は、いずれも過去最大級の能力増強に入っています(会社計画、独自計算)。日本電子材料は資金を公募増資で調達し、発行済株式数が約15.9%増えたため、2027年3月期の会社予想では純利益の+22.9%に対し、EPSの伸びは+7.4%にとどまります(会社予想、独自計算)。
これに対し、東洋合成工業はひと足先に大型投資を終えた段階にあります。2026年3月期の営業利益率8.7%は5社で最も低いものの、原因は市況ではなく償却負担で、減価償却費は2024年3月期の2,898百万円から5,084百万円に増え、営業利益(3,668百万円)を上回りました(実績)。2027年3月期の設備投資計画(44.6億円)は減価償却費の計画(53.0億円)を下回り、2026年3月期のフリーCFは2,616百万円のプラスに戻りました(会社計画、独自計算)。2027年3月期第1四半期には、感光性材料事業のセグメント利益が前年同期の233百万円の損失から1,052百万円の黒字に転じています(実績)。
ただし、この回復には一過性の増益要因(第1四半期に511百万円)が含まれ、ネット有利子負債は純資産の約0.85倍と5社で最も重い財務です(独自計算)。会社は次の新規感光材工場の準備も進めており、規模と時期が開示されれば、再び償却が先行する局面に入る可能性があります。PERは約19.5倍と5社で最も高く(独自計算)、市場は回復をある程度先取りしているとも読めますが、本ページでは検証できていません。
4. 5社とも、会社予想は下期の利益率の低下を前提にしている
足元の業績は5社とも好調ですが、会社予想から逆算すると、5社すべてが下期の営業利益率を直近の実績より低く置いています(独自計算)。
| 企業 | 直近の実績の営業利益率 | 会社予想の下期の営業利益率 | 会社予想の主な前提(会社説明・会社予想) |
|---|---|---|---|
| トリケミカル研究所 | 26.1%(2027年1月期上期) | 24.4% | 下期の中国向け売上を上期より少なく見込む。想定為替は1ドル155円 |
| 日本電子材料 | 32.1%(2027年3月期第1四半期) | 23.8% | 下期は「需要動向と不安定な為替相場を踏まえて」期初の想定を据え置き |
| 山一電機 | 29.9%(2027年3月期第1四半期) | 19.1% | 第2四半期以降の為替を1ドル150円と、第1四半期の実績(159.49円)より円高に置く |
| RS Technologies | 19.1%(2026年12月期上期) | 17.7% | 期初の通期予想を据え置き |
| 東洋合成工業 | 16.0%(2027年3月期第1四半期) | 9.0% | 上期の一過性の増益要因(計9億円)がなくなり、原燃料高と固定費の増加を見込む |
※直近の実績は、上期の実績が出ている企業は上期、それ以外は第1四半期の値で、期間の長さが異なります。東洋合成工業の第1四半期は、一過性の要因を除くと11.8%です(独自計算)。
会社予想が保守的なのか、需要の減速を織り込んだものなのかは、2026年11月以降に発表される決算で分かり始めます。発見3で見た能力増強とあわせると、仮に需要が会社予想どおり鈍った場合でも、各社は前回の調整局面より大きな固定費を抱えて迎えることになります(条件付きの見方)。
注目企業
5社は、半導体の製造工程の中で次の位置にいます。
| 工程 | 企業 | 手がける製品・サービス |
|---|---|---|
| 前工程(成膜・エッチング) | トリケミカル研究所(4369) | CVD・ALD用の高純度化学材料(High-k材料など)、エッチング材料 |
| 前工程(リソグラフィ) | 東洋合成工業(4970) | フォトレジストの原料になる感光材、半導体向けの高純度溶剤 |
| 前工程(工程管理) | RS Technologies(3445) | テスト用ウェーハ(モニター・ダミー)の再生加工、プライムウェーハ |
| ウェーハ検査 | 日本電子材料(6855) | ウェーハテスト用のプローブカード |
| 後工程(バーンイン・最終検査) | 山一電機(6941) | バーンインソケット、テストソケット、高速伝送コネクタ |
中心企業
選定基準の3つ(工程での独自の技術または高いシェア、中堅規模、黒字で財務に重大な懸念がないこと)をすべて満たす2社です。
株式会社トリケミカル研究所(4369)
半導体の成膜(CVD・ALD)やエッチングに使う高純度化学材料の専業メーカーです。微細化に伴う材料の切り替えに合わせて、High-k(高誘電率絶縁膜)材料などの新材料を「いち早く提案し、安定供給する」ことを強みとしています(有価証券報告書、会社説明)。2026年1月期の売上高は23,883百万円(前期比+26.3%)、営業利益は5,902百万円(営業利益率24.7%)でした(実績・連結)。2027年1月期の中間期も、売上高14,705百万円(前年同期比+18.8%)、営業利益3,838百万円(同+20.8%)と増収増益です(実績)。自己資本比率は77.9%(2026年7月末)です。
選定理由は、単一事業で25%前後の営業利益率を保ち、前回の調整局面でも17.3%を確保した収益の安定性です。一方、売上高の45.5%をHigh-k材料が、34.0%を中国向けが占める集中と、持分法投資利益(主に韓国の合弁会社)の大きさが、この会社を読むうえでの注意点です。→ トリケミカル研究所の分析
日本電子材料株式会社(6855)
ウェーハ上のチップを切り分ける前に電気的に検査する工程(ウェーハテスト)で使う、プローブカードの専業メーカーです。調査会社TechInsightsによると、2021年のプローブカード市場で世界4位でした。主力はMEMS技術を使った「Mタイプ」で、プローブカード売上の約8割を占め、メモリー向けが中心です(会社開示)。2026年3月期の売上高は29,366百万円(前期比+23.2%)、営業利益は7,249百万円(営業利益率24.7%)でした(実績・連結)。2027年3月期第1四半期は売上高9,641百万円(前年同期比+77.3%)、営業利益3,094百万円(同+109.7%)で、会社は通期予想を売上高36,400百万円、営業利益9,450百万円に引き上げました(会社予想)。自己資本比率は78.2%(2026年6月末)です。
選定理由は、世界の大手メモリーメーカー(米マイクロン、キオクシア系など)に継続して採用され、HBMなどAI向けメモリーの需要拡大を増収要因に挙げている点です(会社説明)。一方、利益率の振れ幅は5社で最も大きく、マイクロンのグループ2社で売上の30.9%を占める顧客集中もあります。→ 日本電子材料の分析
関連企業・比較対象
選定基準の一部にしか当てはまらないものの、中心企業との比較に意味がある3社です。それぞれ、何を比べるために掲載しているかを示します。
山一電機株式会社(6941): 検査工程の循環を、後工程の側から比べるため
完成した半導体チップを検査装置につなぐICソケット(バーンインソケット、テストソケット)のメーカーで、テストソリューション事業が2026年3月期の売上の50.1%を占めます。もう一つの柱は、AIデータセンター向けを含む高速伝送コネクタです(同47.0%)。2026年3月期の売上高は52,698百万円(前期比+16.3%)、営業利益は11,556百万円(営業利益率21.9%)で過去最高でした(実績・連結)。ROEは21.1%で5社の中で最も高い水準です。
基準への当てはまりが部分的なのは、ソケットの世界シェアを一次情報で確認できず、売上の半分近くが検査以外のコネクタ事業だからです。米Qualcommへの販売が2期続けて100億円規模であること(有価証券報告書)と、会社が挙げる要素技術を「独自技術」と判断して掲載しました。日本電子材料と同じく検査工程の投資に需要が左右される企業で、コネクタという別の成長源がその循環をどこまで和らげるかを比べる対象です。→ 山一電機の分析
株式会社RS Technologies(3445): 市況に強い「再生サービス」型のモデルと比べるため
半導体工場が工程管理に使うテスト用ウェーハを預かり、膜をはがして磨き直して戻す「ウェーハ再生」が中核です。会社は12インチ再生市場での自社のシェアを約31%(世界首位)と推計しています(会社推計、SEMIデータに基づく)。2025年12月期の売上高は76,707百万円(前期比+29.6%、独自計算)、営業利益は14,281百万円(営業利益率18.6%)でした(実績・連結)。
基準への当てはまりが部分的なのは、事業の範囲と財務の構造の2点です。売上の約4割が利益率5%前後の装置・部材等で、約4分の1が中国のプライムウェーハ子会社の事業です。自己資本比率は39.1%(2025年12月末)で、純資産のほぼ半分が非支配株主持分です。2026年10月には、2024年12月に連結した中国子会社RSPDHの解散も決めました(会社開示)。テーマの対象にあたるのはウェーハ再生事業で、その市況耐性を、材料・検査部品の企業と比べるために掲載しています。→ RS Technologiesの分析
東洋合成工業株式会社(4970): 大型投資の「その後」を先に示す例として
フォトレジスト(回路を焼き付けるための感光性の樹脂)の原料になる「感光材」をレジストメーカーに納める素材メーカーです。化学増幅型レジスト用材料の精密合成と金属不純物の管理をコア技術とし、ArF・EUV向けの材料の生産能力を増強してきました(有価証券報告書、会社資料)。もう一つの柱の化成品事業では、半導体製造用の高純度溶剤などを手がけます。2026年3月期の売上高は41,956百万円(前期比+8.5%)で過去最高でしたが、営業利益は3,668百万円(営業利益率8.7%)と前期から減りました(実績・単体)。
基準への当てはまりが部分的なのは、製品別の世界シェアを確認できないことと、財務余力が5社の中で相対的に小さいことです(自己資本比率41.9%、2026年6月末)。黒字は続いており、フリーCFもプラスに戻ったため、重大な懸念とまではいえないと判断しました。他の4社がこれから迎える「大型投資の償却が先行する局面」を先に経験している企業として比べる意味があります。→ 東洋合成工業の分析
企業比較
成長率と収益性の位置づけ
トリケミカル研究所: 中心企業/2026年1月期・連結 / 日本電子材料: 中心企業/2026年3月期・連結 / 山一電機: 比較対象/2026年3月期・連結 / RS Technologies: 比較対象/2025年12月期・連結 / 東洋合成工業: 比較対象/2026年3月期・単体
実績を含みます。「計算」の注記は開示値そのものではなく当サイトの計算による値です
注: 横軸は直近通期の前期比増収率、縦軸は同じ期の全社営業利益率で、いずれも決算短信の百万円表示の売上高・営業利益から計算した値。決算期(1月・3月・12月)、連結/単体の区分、事業構成が企業ごとに異なり、同じ時点・同じ事業範囲の比較ではない。RS Technologiesの増収率には、2024年12月に連結した子会社(RSPDH、2026年12月末で操業終了予定)などM&Aによる増加を含み、全社の営業利益率には利益率5%前後の半導体関連装置・部材等の事業(売上の39.4%)が反映されている。東洋合成工業の営業利益率は、大型投資の減価償却費の増加で一時的に下がった水準。次期の会社予想では、東洋合成工業は増収率19.2%・営業利益率11.6%、RS Technologiesは増収率9.5%・営業利益率18.3%で、位置は変わる見込み。
出典: 株式会社トリケミカル研究所 2026年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社RS Technologies 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年2月13日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日) (2026-10-17参照)
直近通期では、中心企業の2社が増収率20%台・営業利益率25%前後の右上に並びます。RS Technologiesは増収率が5社で最も高い一方、M&Aによる増加を含み、利益率の低い事業の比重が上がったため、営業利益率は2社より低い位置にあります。東洋合成工業が左下にいるのは、主に大型投資の償却負担によるものです。次期の会社予想では、東洋合成工業は増収率19.2%・営業利益率11.6%へ右上に、RS Technologiesは増収率9.5%へ左に動く見込みで(会社予想、独自計算)、この図の位置は1年で大きく入れ替わりうる点に注意が必要です。
前回の調整局面と比べた利益率
実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)。「計算」の注記は開示値そのものではなく当サイトの計算による値です
注: 営業利益率は営業利益÷売上高で計算し、小数第2位を四捨五入した(実績の値は各社の決算短信に記載の売上高営業利益率と一致)。「前回の調整局面の決算期」は、半導体・メモリー市況が調整した2023年を中心とする決算期で、トリケミカル研究所は2024年1月期、日本電子材料・山一電機・東洋合成工業は2024年3月期、RS Technologiesは2023年12月期。この期の営業利益の前期比は、トリケミカル研究所−44.4%、日本電子材料−72.8%、山一電機−67.9%(いずれも決算短信記載の値)、RS Technologies−8.6%、東洋合成工業−29.3%(百万円表示からの計算)。RS Technologiesの過去5期の最低値は2025年12月期の18.6%で、市況ではなく低利益率事業の拡大による。東洋合成工業の2024年3月期以降の低下には、大型投資の減価償却費の増加も含まれる。直近通期は、トリケミカル研究所が2026年1月期、RS Technologiesが2025年12月期、他の3社が2026年3月期。次期の会社予想は、トリケミカル研究所が2027年1月期(2026年8月31日修正)、日本電子材料・山一電機・東洋合成工業が2027年3月期(2026年8月に修正)、RS Technologiesが2026年12月期(期初予想を据え置き)。東洋合成工業のみ単体、他は連結。
出典: 株式会社トリケミカル研究所 2024年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社トリケミカル研究所 2026年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社トリケミカル研究所 2027年1月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 業績予想の修正に関するお知らせ(2026年8月7日) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 2027年3月期 第1四半期決算説明会資料(2026年8月5日) (2026-10-17参照) / 株式会社RS Technologies 2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2024年2月13日) (2026-10-17参照) / 株式会社RS Technologies 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年2月13日) (2026-10-17参照) / 株式会社RS Technologies 2026年12月期第2四半期 決算説明資料(2026年8月13日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2025年5月9日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月7日) (2026-10-17参照)
このグラフは、発見1・2の根拠です。直近の営業利益率は上位3社(トリケミカル研究所、日本電子材料、山一電機)が21.9〜24.7%の範囲に並びますが、前回の調整局面では17.3%、5.0%、8.1%と大きく分かれました。RS Technologiesは調整局面でも22.9%を保ち、その後の低下は市況ではなく事業構成の変化によるものです。東洋合成工業は、調整局面(11.0%)よりも投資の償却が重なった直近(8.7%)のほうが低い、という他社と逆の形になっています。
財務と資本効率
| 企業 | 自己資本比率(実績) | ROE(直近通期、会社開示) | 資本効率についての補足 |
|---|---|---|---|
| トリケミカル研究所 | 77.9%(2026年7月末) | 16.3% | 投下資本の増加が利益に先行し、独自計算のROICは18.4%→15.4%に低下 |
| 日本電子材料 | 78.2%(2026年6月末) | 15.0% | 増資資金を含む現金が厚い。尼崎工場の完成後に資本が設備に置き換わる |
| 山一電機 | 73.6%(2026年3月末) | 21.1% | 実質無借金で、ROEの高さは利益率による |
| RS Technologies | 39.1%(2025年12月末) | 12.5% | 会社開示のROIC 10.8%と会社が示すWACC 9.0%の差は1.8ポイント |
| 東洋合成工業 | 41.9%(2026年6月末) | 10.3% | 独自推計のROICは4.7%で、ROEは有利子負債による財務レバレッジで支えられている |
ROICは企業ごとに計算方法が異なり(会社開示と独自計算が混在)、横に並べて大小を比べることはできません。各社の定義は個別の分析記事に記載しています。
詳細分析
事業の質(収益性・利益の振れ幅)
- 日本電子材料と山一電機は、売上の減少に対して利益が大きく減る構造です。 前回の調整局面の売上高は、日本電子材料が−16.0%、山一電機が−22.5%でしたが、営業利益はそれぞれ−72.8%、−67.9%でした(実績)。日本電子材料は「国内工場の高い稼働率」を増益要因に挙げており(会社説明)、稼働率が下がる局面では逆に働きます。なお、日本電子材料の−72.8%は決算短信に記載された前期比で、百万円表示の数値から計算すると−72.9%になります。
- トリケミカル研究所は、2022年1月期以降、調整局面の17.3%を除いて25%前後の営業利益率で推移しています(実績)。会社は「売上高営業利益率25%程度への回復・維持」を経営目標にしています。2026年1月期は減価償却費の増加で売上総利益率が42.4%から37.8%に下がっており、大型投資の償却をどこまで増収で吸収できるかが利益率の維持の条件です。
- RS Technologiesは、5期を通じて営業利益率が18.6%を下回っていません(実績)。連結の利益率の低下は、利益率の低い事業の拡大によるものです(発見2)。
- 東洋合成工業の利益率の低さは、市況ではなく大型投資の償却負担によるものです(発見3)。セグメント別には、感光性材料事業の利益率が2022年3月期の16.0%から2026年3月期の4.0%へ下がった一方、高純度溶剤を含む化成品事業は10.3%から16.4%へ上がり、2026年3月期は営業利益の71.3%を化成品事業が稼ぎました(独自計算)。
競争優位の性格
| 企業 | 競争優位の根拠(確認できる事実・会社説明) | 確認できていないこと |
|---|---|---|
| トリケミカル研究所 | 新材料の早期提案と量産。2020〜2024年度に新製品14件(会社開示)。単一事業で営業利益率25%前後 | 品目別の世界シェア、価格 |
| 日本電子材料 | 2021年に世界4位(TechInsights)。マイクロン、キオクシア系など大手メモリーメーカーへの継続採用 | HBM向けのシェア、2022年以降の順位 |
| 山一電機 | Qualcommへの2期連続100億円規模の販売。TS事業のセグメント利益率26.5%(2026年3月期、独自計算) | ソケットの市場シェア、競合との比較 |
| RS Technologies | 12インチ再生で約31%(会社推計)。全顧客との直接取引、膜をすべてはがせる薬品処理、銅の除去技術(会社説明) | 顧客別の売上、稼働率、再生単価 |
| 東洋合成工業 | 化学増幅型レジスト用材料の精密合成、金属不純物の管理(会社説明) | 製品別の世界シェア、信越化学工業以外の顧客 |
5社に共通するのは、顧客の工程で認定を受けて採用される製品だという点です。いったん採用されると取引が続きやすい構造だと考えられますが、品目ごとのシェアや、採用を競合に奪われた事例はどの会社も開示しておらず、競争優位の強さは「推定」の段階にとどまります。
成長性
- 増収率(直近通期、実績)は、RS Technologies 29.6%(独自計算)、トリケミカル研究所26.3%、日本電子材料23.2%、山一電機16.3%、東洋合成工業8.5%です。
- 年平均成長率(直近4年、独自計算)は、RS Technologies 22.0%、トリケミカル研究所19.9%、山一電機7.4%、東洋合成工業6.1%、日本電子材料5.6%です。RS TechnologiesにはM&Aによる増加が含まれ、自前で育てたウェーハ再生事業は2022〜2025年12月期に年率+15.4%でした(独自計算)。日本電子材料は2022年3月期を起点にすると、その後2期の減収が含まれるため低く出ます。
- 次期の会社予想の増収率は、山一電機24.9%、日本電子材料24.0%、トリケミカル研究所23.5%、東洋合成工業19.2%、RS Technologies 9.5%です(会社予想、独自計算)。RS Technologiesの2026年12月期の予想は期初から据え置かれています。
- 成長の源泉も違います。日本電子材料とトリケミカル研究所はメモリー(HBMを含む)と先端ロジック向けの需要に、山一電機はメモリー向けのバーンインソケットに加えてAIデータセンター向けのコネクタという検査以外の需要に支えられています。山一電機のコネクタソリューション事業の営業利益は、2025年3月期の1,213百万円から2026年3月期の4,406百万円へ3.6倍になりました(実績)。RS Technologiesは世界で進む12インチ工場の新設に合わせた再生能力の拡大を、東洋合成工業はArF・EUV向けレジスト材料の数量増と新工場の稼働率の上昇を、成長の条件に置いています(いずれも会社説明)。
大型投資の状況
| 企業 | 主な投資計画(会社計画・会社開示) | 主な資金の出どころ |
|---|---|---|
| トリケミカル研究所 | 2029年1月期までに本社工場・南アルプス事業所・台湾子会社などに約122億円(残りの支払額。独自計算) | 手元資金と借入 |
| 日本電子材料 | 尼崎工場(約125億円、2028年8月完成予定) | 2026年3月の公募増資(手取り約122億円、発行済株式数は約15.9%増加) |
| 山一電機 | 2027〜2029年3月期の3年間で設備投資180億円、戦略投資(M&Aなど)50億円 | 営業CF |
| RS Technologies | 再生ウェーハの月産能力を2025年の69万枚から2028年に119万枚へ。2026〜2028年に再生ウェーハ工場へ約405億円 | 営業CFと手元資金 |
| 東洋合成工業 | 中期経営計画の5年間(2023〜2027年3月期)の設備投資は累計327.6億円の見込み。次の新規感光材工場の規模・時期は未開示 | 借入 |
投資の回収が遅れた場合の影響は、財務余力の小さい東洋合成工業と、利益率の振れ幅が大きい日本電子材料で相対的に大きくなりうると考えられます(独自の解釈)。
主要リスクの違い
| 企業 | 顧客・地域の集中(実績) | その他の主なリスク |
|---|---|---|
| トリケミカル研究所 | 上位3社で売上の47.5%。中国向け34.0%、台湾向け33.7% | High-k材料への依存(売上の45.5%)。経常利益の18.0%が持分法投資利益(主に韓国の合弁会社) |
| 日本電子材料 | 米マイクロンのグループ2社で30.9%、上位3社で44.7% | メモリー市況の循環。部品を供給するタイ子会社が2026年9月の洪水で稼働停止 |
| 山一電機 | 米Qualcommで20.8%。日本以外の顧客向けが91.1% | 為替(2027年3月期第1四半期の営業利益の増加21.3億円のうち10.9億円が円安の効果)。生産がフィリピンに集中 |
| RS Technologies | 顧客別は非開示。12インチ再生ウェーハの出荷の55.0%が台湾向け | 中国のプライムウェーハ事業の再編(2027年完了予定)による持分比率の変化。RSPDH解散に伴う特別損失(金額は精査中) |
| 東洋合成工業 | 信越化学工業で16.4%(前期の13.3%から上昇) | 固定費の重さと有利子負債。原燃料価格の上昇(会社が2027年3月期下期の減益要因に挙げている) |
現在の市場評価(参考)
各社の個別記事で、2026年10月16日の終値をもとに計算した会社予想EPSベースのPERは、トリケミカル研究所約15.8倍、日本電子材料約15.6倍、山一電機約15.6倍、RS Technologies約14.4倍、東洋合成工業約19.5倍でした。PBRは順に約2.71倍、約2.25倍、約3.28倍、約1.61倍、約2.57倍です(独自計算)。
PERは5社とも14〜20倍の範囲にあり、大きな差はありません。ただし、同じ倍率でも意味は異なります。日本電子材料と山一電機は、決算期末時点のPERが2022〜2025年3月期に6〜8倍台の年が多く(利益が落ち込んだ2024年3月期を除く)、この2年で市場の評価の前提が大きく変わっています(有価証券報告書)。RS TechnologiesはEPSが少数株主の取り分を差し引いた後の利益で、連結の営業利益の伸びがそのまま1株当たり利益の伸びにはなりません。東洋合成工業の2027年3月期上期の会社予想には、一過性の増益要因が計9億円含まれます(会社説明)。
また、2026年の高値から株価が大きく下がっている企業があります。東洋合成工業は5月の19,310円から約52%下、山一電機は6月の11,420円の約76%の水準で、RS Technologiesは7月の8,650円から10月16日の5,430円まで下がりました。日本電子材料も、2026年3月期中の最高株価10,270円の約7割の水準です(各社の記事より)。会社はいずれも株価の動きの理由を説明しておらず、本ページでも原因は特定できていません。倍率の水準は、AI向け需要がどれだけ長く続くかという前提と切り離しては読めません。
確認できた事実と未検証の仮説
トリケミカル研究所
- 確認できた事実: 営業利益率は2022年1月期以降、調整局面の17.3%を除いて25%前後で推移し、2027年1月期上期も26.1%でした。上期の持分法投資利益(648百万円)は、会社が期初に減益を見込んでいたのに対し前年同期を上回りました(実績)。
- 未検証の仮説: 2029年1月期までの約122億円の投資が、ROICを大きく下げずに収益化すること。中国向け売上(売上の34.0%)が規制や現地化の中でも続くこと。品目別の数量・稼働率の開示がなく、現時点では確かめられません。
日本電子材料
- 確認できた事実: 2026年3月期の受注高は売上高の約1.12倍、期末の受注残高は前期比+40.7%で、2027年3月期第1四半期の営業利益率は32.1%でした(実績・独自計算)。
- 未検証の仮説: AI向けメモリーの需要が以前より長く続き、尼崎工場が稼働する2028年以降も今の利益率を保てること。HBM向けのシェアや、増収のうち市場拡大とシェア上昇の寄与は開示されていません。
山一電機
- 確認できた事実: コネクタソリューション事業の営業利益は1年で3.6倍になり、2027年3月期第1四半期もセグメント利益率19.0%でした。テストソリューション事業の受注残高は前期比+54.7%です(実績・独自計算)。
- 未検証の仮説: コネクタ事業の成長が、検査工程の循環による利益の振れを和らげること。第1四半期の増益の約半分は円安の効果で、為替を除いた実力値の推移はまだ確認できていません。
RS Technologies
- 確認できた事実: ウェーハ再生事業は2022〜2025年12月期の4期とも増収増益で、2026年12月期上期のセグメント利益率は35.5%でした(実績・独自計算)。
- 未検証の仮説: 2028年までの生産能力の拡大(2025年比約1.72倍)が、利益率を保ったまま出荷につながること。稼働率や再生単価は開示されておらず、RSPDHの撤退と中国事業の再編が中期経営計画に与える影響もまだ分かりません。
東洋合成工業
- 確認できた事実: 2026年3月期のフリーCFは2,616百万円のプラスに戻り、2027年3月期第1四半期の感光性材料事業は黒字に転じました(実績・独自計算)。
- 未検証の仮説: 感光性材料事業の利益率が、一過性の要因を除いても投資前の水準(15%前後)に戻ること。第4感光材工場の稼働率やArF・EUV向けの売上比率は開示されていません。
業界の構造変化
- AI向けメモリー・先端ロジックの投資の持続性: 5社の足元の増収は、AI向けの需要に強く支えられています。発見4のとおり、5社とも会社予想は下期の利益率の低下を前提にしています。メモリーメーカーの設備投資計画や在庫の動きが、各社の受注に先行して表れると考えられます(独自の解釈)。
- メモリー市況の循環: 前回の調整局面では、日本電子材料、山一電機、トリケミカル研究所の営業利益がそれぞれ前期比−72.8%、−67.9%、−44.4%となりました(実績、決算短信に記載された前期比)。各社とも当時より固定費(新工場の償却費・人件費)が増えており、次の調整局面では利益の振れがより大きくなる可能性があります(条件付きの見方)。
- 米中対立と中国の半導体の内製化: トリケミカル研究所は売上の34.0%が中国向けで、中国の規制で光ファイバー向けの一部原料が調達できなくなったことも開示しています。合肥では合弁会社の工場を2027年前半に完成させる予定です。RS Technologiesはプライムウェーハ事業をすべて中国で営み、中国政府の補助金(2025年12月期は2,108百万円)も受けています。規制や現地調達の動きは、この2社に特に影響しうる論点です(各社の記事より)。
- 為替: 5社とも海外向けの売上や、海外の半導体工場向けの需要の比率が高い企業です。山一電機は1ドル1円の変化で年間の営業利益が1.9億円動くと開示しています(会社開示)。円高に転じた場合、増益の一部が為替の効果だった企業ほど影響を受けます。
- 顧客の寡占化と価格交渉力: 顧客はメモリー・スマートフォン向け半導体・レジストの大手に集中しています。日本電子材料は「継続した価格要請」、山一電機は価格競争の「激化」を事業等のリスクに挙げています(有価証券報告書)。顧客の寡占が進むほど、価格交渉力は顧客側に偏りやすいと考えられます(独自の解釈)。
- 工場の新設ラッシュ: 世界各地で12インチの半導体工場の新設が進んでいることを、RS Technologiesは再生ウェーハの需要の根拠に挙げています(会社調べ)。新工場は、材料・プローブカード・ソケット・再生ウェーハのいずれにとっても新しい認定と採用の機会になります。一方、計画の延期や中止は、5社が同時に進める能力増強の稼働率を下げる要因になりえます。
次の決算で確認する事項
トリケミカル研究所(2027年1月期 第3四半期・通期)
- 下期の営業利益率: 会社予想は24.4%(上期は26.1%)。新設備の償却負担を増収で吸収できているか。売上総利益率(上期36.2%、前年同期38.1%)の推移。
- 中国向け売上: 会社は下期を5,200百万円と、上期の5,840百万円より少なく見込んでいます。規制や顧客の生産効率化の影響が想定の範囲に収まるか。
- 持分法投資利益: 会社予想は下期も上期並み(約6.4億円)。
- 中期経営計画の見直し(2027年3月ごろ): 2029年1月期の目標(売上高31,700百万円)は、2027年1月期の修正予想29,500百万円から2年で+7.5%にとどまります(独自計算)。目標が引き上げられるか。
日本電子材料(2027年3月期 第2四半期)
- 第2四半期(2026年7〜9月): 会社予想から逆算すると売上高9,759百万円、営業利益2,306百万円(営業利益率23.6%)が前提です(独自計算)。第1四半期の32.1%からどこまで下がるか。
- 下期の予想の扱い: 期初の想定のまま据え置かれた下期(売上高17,000百万円、営業利益4,050百万円)が見直されるか。
- 売上総利益率: 第1四半期は47.3%と前年同期の51.4%から下がりました。価格要請や製品構成の影響が続くか。
- タイ子会社の洪水による稼働停止が、出荷や損失に表れるか。受注残高の推移。
山一電機(2027年3月期 第2四半期、2026年11月5日発表予定)
- 第2四半期: 会社予想から逆算すると売上高16,007百万円、営業利益3,347百万円(営業利益率20.9%)が前提です(独自計算)。
- 為替の効果: 会社の前提は1ドル150円。実際の為替との差と、会社が示す感応度(1円で営業利益1.9億円)による影響。
- コネクタソリューション事業の利益率(第1四半期19.0%)と、データセンター向けの出荷が続くか。
- テストソリューション事業のメモリー向けバーンインソケットと、低調が続く車載向けの動き。
RS Technologies(2026年12月期 第3四半期・通期)
- 下期の会社予想: 売上高43,405百万円、営業利益7,665百万円(営業利益率17.7%)が必要です(独自計算)。
- ウェーハ再生事業のセグメント利益率: 上期の35.5%は、三本木工場の定期メンテナンス費用と第7工場の整備費用で押し下げられたと会社は説明しています。下期に戻るか、低下が続くか。
- 三本木第7工場の稼働開始と、再生事業の売上の伸び。
- RSPDHの解散に伴う特別損失の金額と、GRITEKの再編による当社持分比率の変化の見通し。
東洋合成工業(2027年3月期 第2四半期、2026年11月6日発表予定)
- 上期の営業利益: 会社予想は3,500百万円。第2四半期に見込む在庫評価益(4億円)の実際の計上額。
- 感光性材料事業のセグメント利益: 一過性の要因を除いた実力値が、第1四半期の黒字転換に続いて改善しているか。
- 原燃料価格の上昇の影響と、販売価格への転嫁の進み具合。
- 新規感光材工場の規模・時期の開示と、ネット有利子負債(純資産の約0.85倍)の推移。
分析の前提と出典
選定基準と中心企業・関連企業の区分
選定基準は次の3つです。
- 半導体の製造装置・材料・部品・検査などの工程で、高い世界シェアまたは独自技術を持つ
- 大手ほど注目されていない(本ページでは、2026年10月16日の株価で計算した時価総額(自己株式を除く株式数ベース)が約740億〜1,610億円の中堅規模を目安とした。独自計算)
- 直近期まで黒字で、財務の健全性に重大な懸念がない
3つすべてに当てはまるトリケミカル研究所と日本電子材料を中心企業としました。山一電機(ソケットの世界シェアを確認できず、売上の約半分が検査以外のコネクタ)、RS Technologies(利益率の低い事業と中国のプライムウェーハ事業の比重が大きく、自己資本比率39.1%)、東洋合成工業(製品別の世界シェアを確認できず、自己資本比率41.9%)は、基準に部分的にしか当てはまらないため、関連企業・比較対象としています。このページは企業の順位付けや総合評価を目的としていません。
世界シェアを一次情報で確認できた企業は限られます。 確認できたのは、RS Technologies(12インチ再生ウェーハ市場で約31%、会社推計)と日本電子材料(2021年のプローブカード市場で4位、調査会社TechInsights)の2社です。山一電機と東洋合成工業は製品別の市場シェアを開示しておらず、本ページでも確認できていません。トリケミカル研究所は「ニッチな市場であることから、現状、競争相手となる企業は少ない」と説明していますが、シェアの数値は開示していません(いずれも各社の記事より)。この3社は、基準1を「独自技術」の面で満たすと判断しました。
決算期と数値の扱い
- このページの数値は、各社の個別分析記事とグラフ(2026年10月17日時点で確認できた開示)にもとづきます。
- 決算期は会社ごとに異なり、トリケミカル研究所は1月、RS Technologiesは12月、日本電子材料・山一電機・東洋合成工業は3月です。「直近の通期実績」は、トリケミカル研究所が2026年1月期、RS Technologiesが2025年12月期、他の3社が2026年3月期です。「前回の調整局面」は、トリケミカル研究所が2024年1月期、日本電子材料・山一電機・東洋合成工業が2024年3月期、RS Technologiesが2023年12月期を指します。
- 東洋合成工業のみ単体(連結子会社なし)で、他の4社は連結です。セグメントの定義も会社ごとに違うため、比較表の数値は同じ時点・同じ定義の数字ではありません。
- 文中では 実績、会社予想・会社計画、独自計算・推定 を区別して書きます。会社予想から逆算した四半期・下期の数値は独自計算です。
指標の定義と会計上の注意
- 営業利益率・増収率: 決算短信の百万円表示の数値から計算し、小数第2位を四捨五入しました。営業利益の前期比は、決算短信に記載された値を優先しています(日本電子材料の2024年3月期は記載値−72.8%、百万円表示からの計算では−72.9%)。
- 自己資本比率: 時点が企業ごとに異なります(比較表の注記参照)。RS Technologiesの純資産のほぼ半分は非支配株主持分で、自己資本比率はそれを含みません。
- ROIC: RS Technologiesは会社開示値、他の4社は個別記事の独自計算で、投下資本の定義(現金や投資有価証券の扱い)と税率の仮定が企業ごとに異なります。
- EV/営業利益: 時価総額から実質手元資金を差し引いて計算しました。トリケミカル研究所は持分法投資利益が営業利益に含まれないため、倍率が高めに出ます。
- 持分法投資利益と非支配株主持分: トリケミカル研究所は経常利益の18.0%が持分法投資利益(2026年1月期)、RS Technologiesは当期純利益の74.1%が親会社株主に帰属(2025年12月期)します。営業利益だけでは株主に帰属する利益の大きさを比べられません。
詳細比較表
| 売上高(百万円) | 増収率(%) | 売上高の年平均成長率(%、4年) | 営業利益(百万円) | 営業利益率(%) | 過去5期の営業利益率の最低値(%) | ROE(%) | 自己資本比率(%) | 次期の増収率(%、会社予想) | 次期の営業利益率(%、会社予想) | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| トリケミカル研究所(4369・中心企業)2026年1月期・連結 | 23,883 | 26.3(計算) | 19.9(計算) | 5,902 | 24.7(計算) | 17.3(計算) | 16.3 | 77.9 | 23.5(予・計算) | 25.3(予・計算) |
| 日本電子材料(6855・中心企業)2026年3月期・連結 | 29,366 | 23.2(計算) | 5.6(計算) | 7,249 | 24.7(計算) | 5(計算) | 15 | 78.2 | 24(予・計算) | 26(予・計算) |
| 山一電機(6941・比較対象)2026年3月期・連結 | 52,698 | 16.3(計算) | 7.4(計算) | 11,556 | 21.9(計算) | 8.1(計算) | 21.1 | 73.6 | 24.9(予・計算) | 22.8(予・計算) |
| RS Technologies(3445・比較対象)2025年12月期・連結 | 76,707 | 29.6(計算) | 22(計算) | 14,281 | 18.6(計算) | 18.6(計算) | 12.5 | 39.1 | 9.5(予・計算) | 18.3(予・計算) |
| 東洋合成工業(4970・比較対象)2026年3月期・単体 | 41,956 | 8.5(計算) | 6.1(計算) | 3,668 | 8.7(計算) | 8.7(計算) | 10.3 | 41.9 | 19.2(予・計算) | 11.6(予・計算) |
実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)。「計算」の注記は開示値そのものではなく当サイトの計算による値です
注: 各社の直近の通期実績(決算期は各社で異なる。トリケミカル研究所は1月、RS Technologiesは12月、他の3社は3月)。東洋合成工業のみ単体(連結子会社なし)、他は連結。金額は百万円未満切り捨て。営業利益率と増収率は百万円表示の数値から計算し、小数第2位を四捨五入した。RS Technologiesの増収率(FY2024の59,200百万円→FY2025の76,707百万円)も同様に計算した。売上高の年平均成長率は実績値からの計算で、トリケミカル研究所・日本電子材料・山一電機・東洋合成工業は2022年1月期/3月期からの4年間、RS Technologiesは2021年12月期からの4年間(FY2021の売上高は同社決算説明資料の記載値)。RS Technologiesの成長にはM&Aによる増加を含む。「過去5期の営業利益率の最低値」は各社記事のグラフ(RS TechnologiesはFY2021〜FY2025、他はFY2022〜FY2026)の最低値で、トリケミカル研究所・日本電子材料・山一電機はFY2024(半導体・メモリーの調整局面)、RS TechnologiesはFY2025、東洋合成工業はFY2026(大型投資の償却負担)の値。最低値の時期と理由が企業ごとに異なるため、市況への耐性の比較には「調整局面と直近の営業利益率」のグラフを参照。ROEは会社開示値。自己資本比率は時点が異なり、トリケミカル研究所は2026年7月末、日本電子材料と東洋合成工業は2026年6月末、山一電機は2026年3月末、RS Technologiesは2025年12月末。RS Technologiesの純資産のほぼ半分は非支配株主持分で、自己資本比率はそれを含まない。次期の会社予想は、トリケミカル研究所が2027年1月期(2026年8月31日修正)、日本電子材料が2027年3月期(2026年8月7日修正)、山一電機が2027年3月期(2026年8月5日修正)、RS Technologiesが2026年12月期(期初予想を据え置き)、東洋合成工業が2027年3月期(2026年8月7日修正)。次期の増収率と営業利益率は、会社予想の売上高・営業利益と直近実績からの計算。
出典: 株式会社トリケミカル研究所 有価証券報告書 第48期(2026年1月期) (2026-10-17参照) / 株式会社トリケミカル研究所 2026年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社トリケミカル研究所 2024年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 株式会社トリケミカル研究所 2027年1月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 日本電子材料株式会社 業績予想の修正に関するお知らせ(2026年8月7日) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 有価証券報告書 第71期(2026年3月期) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 山一電機株式会社 2027年3月期 第1四半期決算説明会資料(2026年8月5日) (2026-10-17参照) / 株式会社RS Technologies 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年2月13日) (2026-10-17参照) / 株式会社RS Technologies 2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2024年2月13日) (2026-10-17参照) / 株式会社RS Technologies 2026年12月期第2四半期 決算説明資料(2026年8月13日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2023年5月12日) (2026-10-17参照) / 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月7日) (2026-10-17参照)
出典
- 株式会社トリケミカル研究所 2027年1月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 株式会社トリケミカル研究所 第49期(2027年1月期)第2四半期決算説明資料(2026-10-17参照)
- 株式会社トリケミカル研究所 有価証券報告書 第48期(2026年1月期)(2026-10-17参照)
- 株式会社トリケミカル研究所 2026年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 株式会社トリケミカル研究所 2024年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 株式会社トリケミカル研究所 2023年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 松井証券 トリケミカル研究所(4369) 株価ページ(2026年10月16日終値)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 2026年度第1四半期決算補足資料(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 2027年3月期第2四半期連結累計期間及び通期連結業績予想並びに剰余金の配当(中間配当)予想の修正に関するお知らせ(2026年8月7日)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 有価証券報告書 第67期(2026年3月期)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 2024-2026年度 JEMグループ中期経営計画(2025年度進捗状況)(2026-10-17参照)
- 日本電子材料株式会社 タイ国内の豪雨・洪水について(2026年9月30日)(2026-10-17参照)
- TechInsights「Probe Card Market hit $2.5B in 2021」(2026-10-17参照)
- 松井証券 日本電子材料(6855) 株価ページ(2026年10月16日終値)(2026-10-17参照)
- 山一電機株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年8月5日、IR BANK掲載のPDF)(2026-10-17参照)
- 山一電機株式会社 2027年3月期 第1四半期決算説明会資料(2026年8月5日)(2026-10-17参照)
- 山一電機株式会社 2026~2028年度 中期経営計画(2026年5月13日)(2026-10-17参照)
- 山一電機株式会社 有価証券報告書 第71期(2026年3月期)(2026-10-17参照)
- 山一電機株式会社 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 山一電機株式会社 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- 山一電機株式会社 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-10-17参照)
- Yahoo!ファイナンス 山一電機(株)【6941】株価・株式情報(2026年10月16日時点)(2026-10-17参照)
- 株式会社RS Technologies 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年2月13日)(2026-10-17参照)
- 株式会社RS Technologies 2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年8月13日)(2026-10-17参照)
- 株式会社RS Technologies 2023年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2024年2月13日)(2026-10-17参照)
- 株式会社RS Technologies 2026年12月期第2四半期 決算説明資料(2026年8月13日、中期経営計画を含む)(2026-10-17参照)
- 株式会社RS Technologies 艾索精密部件(惠州)有限公司(RSPDH)の解散並びに車載カメラモジュール事業への参入中止に関するお知らせ(2026年10月9日)(2026-10-17参照)
- Yahoo!ファイナンス (株)RS Technologies【3445】株価・株式情報(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年5月8日)(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2025年5月9日)(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 2024年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2024年5月10日)(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)(2023年5月12日)(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)(2026年8月7日)(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 2027年3月期 第1四半期 決算補足説明資料(2026年8月7日、業績予想の修正を含む)(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 2026年3月期 決算説明会資料(2026年5月15日、中期経営計画の進捗を含む)(2026-10-17参照)
- 東洋合成工業 第76期(2026年3月期)有価証券報告書(2026-10-17参照)
- Yahoo!ファイナンス 東洋合成工業(株)【4970】株価・株式情報(2026-10-17参照)
中心企業
株式会社トリケミカル研究所(4369)
日本電子材料株式会社(6855)
関連企業・比較対象
山一電機株式会社(6941)
株式会社RS Technologies(3445)
東洋合成工業株式会社(4970)
更新履歴
- — 初版
- — 編集: 中心企業をトリケミカル研究所・日本電子材料の2社に設定し、重要な発見(調整局面での利益の残り方の差、RS Technologiesの連結に隠れた再生事業、東洋合成工業の投資局面の違い、5社の会社予想が置く下期の減速)を冒頭に置く構成へ再編。成長率×営業利益率の散布図と調整局面の営業利益率の比較グラフを追加し、確信度の記述を「確認できた事実/未検証の仮説」に改め、「次の決算で確認する事項」を追加。選定基準・会計上の注意・詳細比較表は末尾の「分析の前提と出典」へ移動