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株式会社ディスコ(6146)

決算期: 03月 / 会計基準: 日本基準 / 分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-07-23

この記事の要点

テーマ「長期的に利益を積み上げる高ROIC企業」の中心企業です。

本記事の財務数値は、特記がない限り日本基準・連結・百万円単位(百万円未満切捨て)です。同社の決算日は3月31日で、本記事の「FY2026」は2026年3月期(2025年4月1日〜2026年3月31日)を指します。会社資料ではこの期間を「2025年度」「FY2025」と呼んでいるため、会社資料と1年ずれる点にご注意ください。文中では 実績(開示された数値)、会社予想(会社が公表した見通し)、独自推計(当メディアが開示数値から計算したもの)を区別して書いています。会社は通期の業績予想を出しておらず、1四半期先の予想だけを開示しています。

要点の詳細

事業概要・ビジネスモデル

ディスコは1937年に工業用砥石の製造・販売で創業し、1975年に半導体用のダイシングソーを開発しました(有価証券報告書「沿革」)。事業は精密加工装置と精密加工ツール(消耗品)の製造・販売、それに付随する保守・サービスで、「精密加工システム事業」の単一セグメントです(有価証券報告書)。

区分主な製品・内容
精密加工装置ダイシングソー、レーザソー、グラインダ、ポリッシャ、サーフェースプレーナ
精密加工ツールダイシングブレード、グラインディングホイール、ドライポリッシングホイール
その他部品、保守・サービスなど

会社は「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術」を事業テーマに定め、この領域から外れないことを方針としています(有価証券報告書)。ビジネスモデルの特徴は次の4点です(有価証券報告書「ビジネスモデル」「Fab Important戦略」)。

  1. テストカット:顧客から加工対象物を預かり、専門エンジニアが無償で加工検証を行います。会社はこれを「ビジネスモデルの入り口」と位置づけ、技術トレンドを早く捉える手段にもしています。
  2. アプリケーション技術:装置と消耗品の組み合わせや回転数・送り速度などの加工条件で結果が大きく変わるため、60年以上蓄積した検証データとノウハウが参入障壁になる、と会社は説明しています。
  3. 内製化:主要部品を内製し、模倣を防ぎながらコストを下げています。
  4. 自社工場(Fab Important戦略):ファブレスではなく、広島(呉・桑畑)と長野(茅野)に自社工場を持ち、開発と製造を一体で回しています。

FY2027第1四半期(2026年4〜6月)の出荷額の内訳は、精密加工装置64%(うちダイサ33%、グラインダ26%、周辺装置4%)、精密加工ツール20%、その他16%でした(決算説明資料、出荷額ベース)。ダイサ出荷額の70%、グラインダ出荷額の79%がIC(メモリ・ロジック)向けです。

消耗品である精密加工ツールの売上は、顧客の装置の稼働率に連動します(決算短信)。装置を売った後も、稼働が続く限り消耗品と保守の収入が続く構造です。ただし、年度ごとの製品別売上の金額は、会社Webサイトの「補足情報」にあり、本記事では確認できていません。

売上・利益・CFの構造

売上高の推移(連結)単位: 百万円

注: 日本基準・連結、百万円未満切捨て。FY2026は2026年3月期(2025年4月1日〜2026年3月31日)。会社資料ではこの期間を「2025年度」「FY2025」と表記している。会社は通期の業績予想を開示しておらず(1四半期先までの開示)、通期予想値はない。

出典: 有価証券報告書 第87期(2026年3月期)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照) / 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照)

売上高はFY2022の253,781百万円からFY2026の436,889百万円に増えました(実績)。前期比の伸びはFY2023が+12.0%、FY2024が+8.2%、FY2025が+27.9%、FY2026が+11.1%です(決算短信)。FY2026の出荷額は442,824百万円(前期比+10.3%)でした(決算短信)。会社は装置を顧客が検収した時点で売上を計上するため、出荷から売上計上までに時間差があります。このため会社は、売上高と並んで出荷額を開示しています。

営業利益と営業利益率(連結)単位: 百万円(利益率は%)

注: 営業利益率=営業利益÷売上高(小数第2位を四捨五入)。決算短信記載の売上高営業利益率(36.1/38.9/39.5/42.4/42.3%)と一致。

出典: 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照)

営業利益はFY2022の91,513百万円からFY2026の184,989百万円へ約2.0倍になり、営業利益率は36.1%から42.3%に上がりました(実績)。

内訳を見ると、売上総利益率は60.7%(FY2022)から70.1%(FY2026)へ大きく上がりました。販売費及び一般管理費の対売上高比率は24.6%から27.8%に上がっています(いずれも決算短信から独自計算)。人件費や研究開発費が増えても、付加価値の高い製品の比率上昇と為替の影響で粗利率が上がり、全体の利益率が高まった形です(決算短信の説明)。FY2026は「製品・用途構成の変化」で粗利率がわずかに下がりました(70.6%→70.1%、決算説明資料)。研究開発費は34,156百万円で、売上高の約7.8%です(有価証券報告書から独自計算)。

連結従業員数はFY2022末の4,258人からFY2026末の5,547人へ約30%増えました(有価証券報告書)。従業員1人当たり営業利益は約21.5百万円から約33.4百万円に上がっています(期末従業員数で独自計算)。人を増やしながら1人当たりの利益も伸ばしてきた点は、同社の特徴の一つです。

社内の仕組みも利益率に関係しています。会社は「連結経常利益率」を最重要の業績指標とし、従業員の賞与を経常利益率に連動させています(有価証券報告書)。好況期は賞与が増え、不況期は人件費が自動的に下がるため、固定費の増加を抑える効果があると会社は説明しています。また、社内通貨「Will」で業務を収支管理する「個人Will会計」を全社で運用しています。

四半期売上高と営業利益率(連結)単位: 百万円(利益率は%)

実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)

注: FY2026Q1は2025年4〜6月、FY2027Q1は2026年4〜6月(会社資料の「FY2026 1Q」)。FY2026Q1・Q3・Q4とFY2027Q1は決算短信・決算説明資料の百万円値。FY2026Q2は通期実績から他の3四半期を差し引いた値(営業利益44,392百万円)。FY2027Q2(2026年7〜9月)の会社予想は、第2四半期累計予想(売上高242,800百万円、営業利益104,900百万円)から第1四半期実績を差し引いた値(営業利益55,867百万円)で、会社資料の1,285億円・559億円・43.5%と整合する。利益率は営業利益÷売上高で当メディアが計算。FY2026Q1は38.3%となり、会社資料の億円ベース表示(38.4%)とは端数処理で0.1ポイント異なる。

出典: 2025年度 第4四半期 決算説明資料(2026年4月22日)四半期決算概要 (2026-10-17参照) / 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年7月23日) (2026-10-17参照) / 2026年度 第1四半期 決算説明資料(2026年7月23日)業績見通し (2026-10-17参照)

四半期で見ると、FY2026第4四半期(2026年1〜3月)の売上高は133,060百万円、営業利益率は44.2%で、いずれも過去最高水準でした(実績)。FY2027第1四半期(2026年4〜6月)の売上高は114,308百万円(前年同期比+27.1%)、営業利益は49,033百万円(同+42.2%)、営業利益率は42.9%です(実績)。出荷額は135,906百万円(同+22.3%)で四半期の過去最高を更新しました。会社の当初予想(出荷額1,320億円、売上高106,100百万円、営業利益42,000百万円)をいずれも上回っています。

会社は2026年7月23日に、第2四半期累計(2026年4〜9月)の予想を売上高242,800百万円、営業利益104,900百万円と開示しました(会社予想)。ここから第1四半期実績を差し引いた7〜9月の会社予想は、売上高128,492百万円、営業利益55,867百万円、営業利益率43.5%です(独自計算。会社資料の1,285億円・559億円・43.5%と一致)。4〜9月の出荷額予想は2,769億円で、7〜9月単独では1,410億円です(会社予想、想定為替レート1米ドル159円)。

その後、会社は2026年10月6日に7〜9月の個別(単体)売上高・出荷額の速報を開示しました。報道によると、個別売上高は1,185億円で前四半期比約25%増、市場が見込んでいた会社計画(1,060億円程度)を上回りました(フィスコ報道)。一方で同報道は、連結ベースに換算した試算ではほぼ市場コンセンサス並みでサプライズは乏しいとの見方も伝えており、速報後の株価は大幅に反落しました(同報道)。速報の原文は本記事では確認できていないため、連結の数値は2026年10月22日予定の決算発表で確かめる必要があります。

地域別売上高(顧客所在地基準・連結)単位: 百万円

注: 売上高は顧客の所在地を基礎とする。「その他アジア」は決算短信の「アジア」区分(中国・韓国・台湾を除く)。各地域の百万円未満切捨てのため、合計は連結売上高(FY2025:393,313百万円、FY2026:436,889百万円)と数百万円ずれる。米州のうち米国はFY2025:45,554百万円、FY2026:33,677百万円。

出典: 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)セグメント情報等の注記(関連情報・地域ごとの情報) (2026-10-17参照)

顧客の所在地別では、FY2026に中国が134,975百万円(売上高の約30.9%)、台湾が117,378百万円(約26.9%)でした(決算短信から独自計算)。台湾は前期比約+57.8%と大きく伸び、米州(約−27.9%)と韓国(約−21.9%)は減りました。海外売上高比率は約89.6%です。FY2026には台湾積体電路製造(TSMC)向けの売上が48,240百万円(売上高の11.0%)となり、初めて10%を超えました(有価証券報告書)。

営業キャッシュ・フローとフリー・キャッシュ・フロー(連結)単位: 百万円

注: FCFは会社の定義(営業CF+投資CF)。FY2022・FY2024は有価証券報告書の営業CFと投資CF(FY2022:△43,591、FY2024:△16,403百万円)の合計で、FY2023・FY2025・FY2026は決算短信に記載された値。FY2026の投資CFには定期預金の預入100,000百万円が含まれ、FCFがマイナスになった主因である。有形固定資産の取得による支出はFY2025:66,861百万円、FY2026:35,143百万円。

出典: 有価証券報告書 第87期(2026年3月期)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照) / 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / 2025年度 第4四半期 決算説明資料(2026年4月22日)キャッシュフロー (2026-10-17参照)

営業キャッシュ・フローはFY2022の83,654百万円からFY2026の133,543百万円へ増えました(実績)。FY2026の会社定義のFCF(営業CF+投資CF)は−2,225百万円ですが、これは定期預金への預け入れ100,000百万円を投資CFに含むためで、事業の現金創出力が落ちたわけではありません(決算短信)。有形固定資産の取得による支出は、研究開発用の土地建物を取得したFY2025が66,861百万円、FY2026が35,143百万円でした。

今後の大きな設備投資として、広島県呉市の郷原工場(精密加工装置・ツールの生産設備、総額35,900百万円、2028年4月完了予定)と、羽田R&Dセンター(総額12,800百万円、2027年12月完了予定)があります(有価証券報告書「設備の新設」)。いずれも自己資金でまかなう計画です。

ROIC・資本効率

ROEと事業ROIC単位: %

実績・シナリオを含みます(薄色・点線は実績以外)。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です

注: ROEは有価証券報告書記載値。ROICは会社が開示していないため当メディアが計算した。税引後営業利益=営業利益×(1−実効税率)、実効税率=法人税等合計÷税金等調整前当期純利益(FY2022〜FY2026:28.2/26.5/26.5/26.2/26.2%)。事業投下資本=期末の受取手形・売掛金+棚卸資産(商品及び製品・仕掛品・原材料及び貯蔵品)+有形固定資産+無形固定資産−支払手形及び買掛金−電子記録債務−契約負債(FY2022〜FY2026:195,277/214,746/224,814/311,638/349,350百万円)。現金及び預金は含めない。期末残高ベースで、期中平均ではない。有利子負債はない。

出典: 有価証券報告書 第87期(2026年3月期)主要な経営指標等の推移(自己資本利益率) (2026-10-17参照) / 2026年3月期 決算短信(連結貸借対照表・連結損益計算書) (2026-10-17参照) / 2025年3月期 決算短信(同上、2024年3月期末を含む) (2026-10-17参照) / 2023年3月期 決算短信(同上、2022年3月期末を含む) (2026-10-17参照)

ROE(自己資本利益率)はFY2022〜FY2026に22.4〜27.6%で推移しました(有価証券報告書)。自己資本比率は78.9%(FY2026末)で、有利子負債はありません。

会社はROICを開示していないため、当メディアで計算しました(独自推計、定義はグラフの注記を参照)。売上債権・棚卸資産・有形/無形固定資産から仕入債務と契約負債を引いた「事業投下資本」に対する税引後営業利益の比率は、FY2022の33.7%からFY2024以降は39〜40%前後で推移しています。自社工場を持ち、有形固定資産(FY2026末223,241百万円)を抱える装置メーカーとしては高い水準です。

数字を支えている要因は2つです。1つは利益率の高さ、もう1つは**契約負債(前受金)**の存在です。FY2026末の契約負債は50,006百万円で、顧客から先に受け取ったお金が棚卸資産の一部をまかなっています。一方、棚卸資産は141,325百万円と売上高の約3割あり、そのうち精密加工装置が65,311百万円です(有価証券報告書)。出荷済みで検収前の装置も含まれるため、需要が急に冷えた場合は在庫の評価損や回転の悪化がROICを押し下げる可能性があります。

会社自身は、資本効率の目標として「4年累計連結経常利益率20%以上」と「4年累計RORA(Return On Risk Assets)20%以上」を掲げています。RORAは、経常利益を「棚卸資産+(固定資産−市場性のある投資有価証券−繰延税金資産)+リース残高」で割った指標で、換金しにくい資産の効率を見るものです。FY2026時点で4年累計経常利益率は41.4%、4年累計RORAは51.2%と、いずれも目標を大きく上回っています(決算短信)。

現金及び預金は284,575百万円で、総資産743,410百万円の約38%を占めます(決算短信から独自計算)。会社は余剰資金の扱いを明確なルールで決めています。年度末の現預金から必要資金(運転資金、技術購入予備費、税金・配当、設備拡張資金)を引いた余剰の3分の1を、通常配当(連結純利益の25%)に上乗せして追加配当します(決算説明資料)。FY2026の年間配当は1株505円(うち追加配当192円)、配当性向は40.4%でした(実績)。自社株買いは株主還元の基本方針に含まれていません。

競争優位と競争環境

会社の開示から読み取れる競争優位は、次の3つです。

競合には、ダイサ・グラインダ分野の国内外の装置メーカーがあります。ただし、ディスコは市場シェアを開示しておらず、本記事では一次情報で裏付けられるシェアの数値を確認できていません。中国では半導体装置の国産化が進んでおり、中国向けの売上(約3割)が地元メーカーとの競争にどの程度さらされるかは、今後の確認事項です。

技術の面では、会社自身が「精密ダイヤモンド砥石に替わる加工技術が生まれた場合」をリスクに挙げています(有価証券報告書「事業等のリスク」)。会社はレーザやプラズマを使う加工技術の開発も進めており、SiC(炭化ケイ素)ウェーハ向けにレーザでインゴットを薄く剥がす「KABRAプロセス」を販売しています。

成長ドライバーと市場規模

会社は、AI・IoT・自動運転などで「切る・削る・磨く」技術の用途が広がり、脱炭素に向けたパワー半導体需要も高まるため、中長期的に製品需要が拡大すると見ています(有価証券報告書「対処すべき課題」)。直近の決算資料から読み取れるドライバーは次のとおりです。

ドライバー開示内容区分
生成AI向けHBM・先端ロジック高付加価値製品を中心に精密加工装置の出荷が好調(FY2026、FY2027第1四半期)実績(会社説明)
チップの積層化・薄化HBMのようにチップを薄く削って積み重ねる工程で、グラインダの需要が増える当メディアの解釈
OSAT(後工程受託)向けFY2026第4四半期に生成AI向けとOSAT向けを中心にダイサのIC向けが増加実績(会社説明)
パワー半導体(SiC)EV需要の鈍化で低調(FY2026)。FY2027第1四半期はダイサで前年同期比増加実績(会社説明)
消耗品顧客の設備稼働率に連動し、四半期ベースで過去最高を更新実績(会社説明)

半導体の後工程・ウェーハ加工装置の市場規模について、会社は数値を開示していません。本記事では市場規模の推計は行っていません。

経営者・資本政策

代表執行役社長は関家一馬氏です(有価証券報告書)。会社は1997年に企業理念「DISCO VALUES」を定め、売上やシェアの拡大ではなく「ステークホルダーとの価値交換性の向上」を成長と定義しています(有価証券報告書)。中長期の目標「DISCO VISION 2030」も、定量目標を上記の2指標(4年累計経常利益率・4年累計RORA)にとどめ、売上高目標は掲げていません。

人的資本では、社内通貨Willによる業務の収支管理、異動の自由、経常利益率に連動する賞与、従業員満足度調査(肯定回答率96.5%、FY2026)を開示しています(有価証券報告書)。人材の確保と定着が、アプリケーション技術というノウハウの蓄積に直結する事業構造です。

資本政策は「配当による還元」が基本で、上記のとおり余剰資金の3分の1を追加配当に回すルールがあります。FY2027の中間配当予想は1株171円(前年同期129円)です(会社予想)。

将来シナリオ(条件付き)

会社は通期予想を出していないため、以下は開示された実績をもとにした条件付きの整理です。数値目標や株価の見通しではありません。

現在の市場評価との比較

2026年10月16日の終値は53,850円です(日本経済新聞)。これを使った指標は次のとおりです(いずれも独自計算)。

指標値計算の前提
時価総額約5兆8,410億円発行済株式数(自己株式を除く、2026年6月末)108,467,725株
PER約43.1倍FY2026実績EPS 1,249.84円
PBR約10.0倍FY2026末BPS 5,408.11円
EV/営業利益約30倍時価総額−現金及び預金(284,575百万円、FY2026末)、FY2026営業利益
配当利回り約0.94%FY2026年間配当505円

有価証券報告書に記載された期末のPERは、FY2022から順に18.7倍、20.0倍、73.6倍、26.1倍、49.0倍です。現在のPER(約43倍)は、この5期の中では上の方にあります。FY2024の73.6倍は、純利益の伸びが前期比+1.6%にとどまった期に株価が大きく上昇していたためと考えられます(同期の最高株価57,850円、有価証券報告書)。

FY2027第1四半期の純利益は前年同期比+44.0%で、同じペースが続けば実績ベースのPERは下がります。一方、10月6日の個別売上高の速報の後、株価は大きく下がったと報じられており(フィスコ報道)、市場はすでに高い成長をある程度織り込んでいると解釈できます。成長が会社予想どおりでも、市場の期待を下回ると株価が下がりやすい状況にあると考えられます。

主要リスクと反証条件

リスク内容反証条件(仮説が崩れたと判断する目安)
半導体サイクル顧客の設備投資の凍結・延期で装置の出荷・検収が落ち込む(有価証券報告書「事業等のリスク」)四半期の出荷額が2四半期連続で前年同期を下回る
利益率の低下製品・用途構成の変化や人件費・研究開発費の増加で利益率が下がる通期の営業利益率が35%を下回る、または4年累計経常利益率が30%を下回る
中国売上の約31%が中国向けで、輸出規制や国産化の影響を受けうる中国向け売上が2期連続で減少し、他地域で補えない
顧客集中TSMC向けが売上の11.0%。大口顧客の投資計画の変更の影響が大きくなっている特定顧客向けの比率が上がる一方で、IC以外の用途の出荷が減り続ける
技術代替砥石に替わる加工技術が生まれた場合の影響(会社自身がリスクとして記載)主要用途で他方式への置き換えが決算資料で説明される
在庫棚卸資産が141,325百万円と大きく、需要が急減した場合に評価損が出うる棚卸資産評価損や減損が利益を大きく押し下げる
為替為替感応度は営業利益ベースで米ドル1円あたり年約19億円(会社開示)(外部要因のため反証条件ではなく、感応度で影響を確認する)
災害・BCP生産拠点が広島・長野に集中している災害で生産が長期停止し、供給責任を果たせない事態が起きる

次に確認する主な機会は、2026年10月22日予定のFY2027第2四半期決算です。7〜9月の連結売上高・営業利益率が会社予想(第2四半期累計予想からの差引による独自計算で128,492百万円・43.5%)に届いたか、10〜12月の出荷額予想がどの水準か、中国・台湾向けの比率がどう動いたかが焦点です。

出典