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長期的に利益を積み上げる高ROIC企業

選定基準: ROIC(投下資本利益率)が長期にわたり高水準で、利益の再投資により企業価値を積み上げている日本の上場企業。資本効率と利益成長の持続性を重視し、直近期まで黒字であることを条件とする。

更新日: 2026-10-17

ROIC(投下資本利益率)が高い企業は、少ない資本で利益を生み、その利益を再び事業に投じて規模を広げることができます。これを長く続けられる企業は、利益と企業価値を「複利」のように積み上げていくと考えられます。このページでは、ソフトウェア、FA機器、半導体製造装置、ネット通販、コンサルティングと事業モデルの異なる5社を取り上げ、高い資本効率がどこから生まれ、稼いだ現金がどこへ向かっているかを比べます。調査で浮かび上がったのは、事業そのものの資本効率が高い企業ほど、会社全体のROEは低く見えるという逆転でした。高ROIC企業を見るときの論点は、「どれだけ稼ぐか」から「稼いだ現金をどう使うか」に移りつつあります。

今回の重要な発見

1. 事業の資本効率が高い企業ほど、会社全体のROEは低い

現預金などを除き、事業に投じた資本だけで計算したROIC(事業ROIC、独自推計)は、オービックが約94%、ベイカレントが約73.7%、キーエンスが72.2%、ディスコが39.1%でした。ところが、会社全体のROE(会社開示)は、ベイカレント35.8%、MonotaRO 28.7%、ディスコ25.1%、オービック15.8%、キーエンス13.5%の順です。事業ROICが70%を超える3社のうち、オービックとキーエンスは、ROEでは5社の下位2社になります。

理由は、稼いだ現金を事業で使い切れずに持ち続けていることです。総資産に占める現預金・有価証券などの比率は、オービックが約87.2%、キーエンスが約82%(約3兆円)に達します(独自計算)。一方、自社工場を持つディスコは、4社の中で事業ROICが最も低いにもかかわらず、ROEはオービック・キーエンスを上回ります。総資産に占める現預金の比率が約38%(独自計算。現預金のみの比率で、上記2社とは対象範囲が異なります)と2社より低いことに加え、余剰資金の3分の1を追加配当に回すルールがあることが、ともに影響していると考えます(独自の解釈)。

事業ROICは会社ごとに分母の定義が異なり、オービックは直近1期分の概算です。それでも、事業ROICが数十%台、ROEが10%台という開きは、余剰資金の大きさを抜きにしては説明しにくいと考えます(独自の解釈)。ROEの順位だけで見ると、事業の質を逆に読み違える可能性があるというのが、この調査の最も重要な発見です。

2. 再投資できる量の違いが、5社の「複利」の形を分けている

営業キャッシュ・フローに対する設備投資(有形固定資産などの取得)の比率を計算すると、5社は2つに分かれます(直近通期、独自計算)。

ベイカレントは設備ではなく人材に投資しており、その多くは採用・育成費として費用に計上されます。投資キャッシュ・フローの支出は営業CFの約17.3%(貸付けによる支出を含む)でした。

利益を高い利回りで再び事業に投じる、という本来の意味での複利は、ディスコ(工場・研究開発拠点)、MonotaRO(物流)、ベイカレント(人員)で最もはっきり確認できます。オービックとキーエンスは事業の利回りが極めて高い一方で、それを吸収できるだけの投資先が事業の中に少なく、企業価値の積み上げは余剰資金の配分に左右される段階にあると考えます(独自の解釈)。オービックは2027年3月期に総還元性向110.7%を計画し(会社予想)、キーエンスは約3兆円の金融資産の使い道として、成長投資を「あらかじめ検討枠を設けることなく」最優先とし、M&Aも「時期や金額規模にとらわれることなく」検討する方針を掲げています(会社開示)。

3. 利益率を上げて伸びる3社と、人員に比例して伸びる2社

直近4年間で、営業利益の伸びが売上高の伸びを上回ったのは、オービック(売上高の年平均成長率10.9%に対し営業利益13.2%)、ディスコ(同14.5%に対し19.2%)、MonotaRO(同15.2%に対し17.6%)の3社です(実績から独自計算)。オービックは連結従業員数を約9.8%しか増やさずに売上高を伸ばし、ディスコは従業員1人当たり営業利益を約21.5百万円から約33.4百万円に高めました。

キーエンスとベイカレントは逆に、営業利益率が4期前より下がりました(キーエンス55.4%→51.0%、ベイカレント37.3%→34.3%、実績)。キーエンスの従業員1人当たり営業利益は約46.7百万円と約46.6百万円でほぼ同じ、ベイカレントの従業員1人当たり売上収益も約21.9百万円で同じでした(期末人数ベース、独自計算)。両社の成長は、人員を増やした分だけ利益が増える構造で、採用・育成のペースが成長の上限になります。ただし、キーエンスは2027年3月期第1四半期に営業利益率54.0%、ベイカレントは2027年2月期上期にコンサルタント1人当たり売上+6.6%(会社開示。期末人数から単純計算すると約+3.7%で一致しないため、会社の算出は期中平均人数ベースとみられます)と、変化の兆しもあります。

4. 5社のPERは、長い高成長を前提にしていると解釈できる水準にある

2026年10月16日終値ベースのPERは、5社とも約30〜44倍の範囲にありました(各記事の独自計算)。ただし、オービック・MonotaRO・ベイカレントは会社予想EPS、通期予想を開示していないキーエンス・ディスコは実績EPSで計算しており、基準は揃っていません。その前提のうえで、成長の仕組みもリスクも異なる5社が、おおむね近い範囲で評価されています。いずれも、高い成長が長く続くことをある程度前提にした水準と解釈でき、成長率が変化したときに評価が動きやすい状態にあると考えます。

注目企業

中心企業

5社はいずれも、このページの選定基準(資本効率が長期に高い、営業利益が年率で一桁後半以上伸びている、再投資の対象が確認できる、直近期まで黒字)をすべて満たすため、全社を中心企業としています。基準を部分的にしか満たさない関連企業は、このページには掲載していません。

事業モデルの異なる企業を並べるのは、優劣をつけるためではなく、高い資本効率の「生まれ方」と、稼いだ現金の「使われ方」の違いを比べるためです。5社は、資本効率の源泉によって次の3つの型に分けられます。

オービック(4684):再投資先の少なさが課題になるほどの高収益ERP

自社開発の統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」を直販し、導入(SI)から運用・保守とクラウド(SS)まで一社で手がけます。直近通期(2026年3月期)の売上高は135,209百万円、営業利益は88,823百万円、営業利益率は65.7%でした(実績)。会社資料によると、営業利益は32期連続の増益で、営業利益率は2022年3月期の60.5%から毎期上がっています。

会社開示のROICは16.8%ですが、総資産の約87%を現預金と投資有価証券が占めるため、事業の収益性を低く見せます。決算短信のセグメント資産を分母にした概算では約94%です(独自推計)。導入した顧客が運用・保守の継続収入に積み上がる構造で、SSの外部売上高は4年で年率約14.0%伸びました(独自計算)。資本効率の長期性は、会社開示のROIC(2022年3月期14.1%→2026年3月期16.8%)とROE(15.5〜16.1%)で確認しています。

→ オービックの分析

キーエンス(6861):事業ROIC 70〜90%台と約3兆円の金融資産

FA(ファクトリー・オートメーション)向けのセンサ、測定器、画像処理機器などを自社で企画・開発し、生産は外部に委託(ファブレス)して、直販で売る会社です。直近通期(2026年3月期)の売上高は1,169,289百万円、営業利益は595,759百万円、営業利益率は51.0%でした(実績)。

事業投下資本に対するROICは2022年3月期から2026年3月期に72.2〜90.8%で推移し(独自推計)、「高ROICの持続性」を5期分の推計で確認できる大型株です(ディスコも同じ5期分の推計があります)。一方、約3兆円の金融資産を持つため、ROEは13.5%(実績)にとどまります。営業利益の年平均成長率は9.3%で、選定基準(一桁後半以上)の下限に近い水準です。2027年3月期第1四半期は売上高+32.8%、営業利益+44.7%と加速しました(実績)。

→ キーエンスの分析

ディスコ(6146):自社工場を持ちながら事業ROIC約40%

半導体ウェーハを切る(ダイサ)・削る(グラインダ)・磨く(ポリッシャ)装置と、その消耗品(ブレード・ホイール)を自社で開発・製造します。直近通期(2026年3月期)の売上高は436,889百万円、営業利益は184,989百万円、営業利益率は42.3%で、売上高は6期連続で過去最高です(実績・会社開示)。ROEは25.1%(実績)です。

5社の中で唯一、自社工場を持ち、有形固定資産の大きい事業です。それでも、前受金(契約負債)と高い利益率に支えられ、事業投下資本に対するROICは2024年3月期以降39〜40%前後で推移しています(独自推計)。営業CF(直近通期133,543百万円、実績)を生産能力や研究開発拠点に再投資しながら成長しており、「利益の再投資による積み上げ」を最も典型的に示す企業です。業績が半導体の設備投資サイクルで振れる点は、リスクとして別に扱います。

→ ディスコの分析

MonotaRO(3064):利益率ではなく回転の速さで資本効率を生む

工場・工事現場・自動車整備などで使う間接資材をネットで販売しています。直近通期(2025年12月期)の売上高は333,880百万円(前期比+15.9%)、営業利益は46,192百万円、営業利益率は13.8%でした(実績)。2026年12月期の上期も売上高+20.6%、営業利益+24.9%の増収増益でした(実績)。

営業利益率は5社で最も低い一方、粗利率約30%の商材を高い回転率で売り、在庫の大半を買掛金で賄う運転資本構造により、ROEは27.5〜33.1%(2021年12月期〜2025年12月期、実績)を保ってきました。分母に現預金を含む独自推計ROICは23.5%です(2025年12月期)。5社の中で唯一、成長投資(水戸物流センター、投資額504億円)を借入金も使って賄っており、「実質無借金」から変化しています。

→ MonotaROの分析

ベイカレント(6532):人員とともに年率20%台で伸びる人的資本型

業界ごとに組織を分けず、案件ごとに横断的にチームを組む「ワンプール制」の総合コンサルティング会社です。直近通期(2026年2月期、IFRS)の売上収益は148,332百万円(前期比+27.8%)、営業利益は50,931百万円、営業利益率は34.3%でした(実績)。2027年2月期上期も売上収益+35.7%、営業利益+28.5%と増収増益でした(実績)。

ROEは35.8〜44.2%(2022年2月期〜2026年2月期、実績。2024年2月期までは単体の資本合計当期利益率、2025年2月期以降は連結ROEで、基準の異なる値をつないでいます)で推移し、分母に現預金を含む独自推計ROICは30.6%、現預金を除くと約73.7%です(2026年2月期、独自推計)。2026年10月には手元資金の上限を予想売上収益の約25%に引き下げ、それを超える資金をM&Aと自社株買いに機動的に配分する方針に変えました。自前の採用・育成で伸びてきた会社が、資本を使う成長に踏み出す転換点にあります。

→ ベイカレントの分析

企業比較

成長率と利益率の位置づけ

売上高の年平均成長率(横軸・%、直近4年間)と営業利益率(縦軸・%、直近通期)単位: %

オービック: 2026年3月期・連結 / キーエンス: 2026年3月期・連結 / ディスコ: 2026年3月期・連結 / MonotaRO: 2025年12月期・連結 / ベイカレント: 2026年2月期・IFRS

実績を含みます。「計算」の注記は開示値そのものではなく当サイトの計算による値です

注: 横軸は直近4年間の売上高(ベイカレントは売上収益)の年平均成長率、縦軸は直近通期の営業利益率で、いずれも決算短信の数値から当メディアが計算した値(比較表「roic-compounders-comparison」と同じ数値)。決算期は3社が2026年3月期、MonotaROが2025年12月期、ベイカレントが2026年2月期で、同じ時点の比較ではない。ベイカレントは4期前(2022年2月期)が単体、直近が連結で、2024年9月の持株会社体制移行に伴う切り替え(事業内容は同じ)。営業利益率の水準は事業モデル(ソフトウェア、ファブレス製造、自社工場の製造、ネット通販、コンサルティング)の違いを強く反映しており、資本効率の高さとは一致しない(MonotaROは営業利益率が最も低いが、資本の回転の速さでROEは2番目に高い)。

出典: オービック 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / オービック 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / キーエンス 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / キーエンス 2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ディスコ 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ディスコ 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / MonotaRO 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / MonotaRO 2021年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ベイカレント 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照) / ベイカレント 2023年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結) (2026-10-17参照)

直近4年間の売上高の年平均成長率と、直近通期の営業利益率を並べると、ベイカレントが成長率で右に離れ、オービックが利益率で上に離れて位置します。キーエンスとディスコは、利益率40〜50%台、成長率11〜15%台で中央にまとまります。MonotaROは、成長率はディスコと同程度ですが、利益率は13.8%と最も低い位置にあります。

この図で注意したいのは、縦軸の利益率の高さが、資本効率の高さと一致しないことです。利益率が最も低いMonotaROのROEは5社で2番目に高く、利益率が最も高いオービックのROEは4番目です。利益率は事業モデルの違いを強く映すため、資本効率は次のグラフで別に見ます。

会社全体のROEと事業ROIC

会社全体のROEと、事業に投じた資本に対するROIC(各社の直近通期)単位: %

実績を含みます。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です

注: 直近通期はオービック・キーエンス・ディスコが2026年3月期、MonotaROが2025年12月期、ベイカレントが2026年2月期(IFRS、ROEは親会社所有者帰属持分当期利益率)。ROEは会社開示値。事業ROICは会社が開示していないため当メディアが推計した値で、分子はいずれも税引後営業利益だが、分母の定義が会社ごとに異なる。オービックは決算短信のセグメント資産合計(67,848百万円)を分母にした概算(約94%、FY2026の1期分のみ算出)。キーエンスとディスコは売上債権・棚卸資産・有形/無形固定資産から仕入債務(ディスコは契約負債も)を引いた事業投下資本。ベイカレントは親会社所有者帰属持分+借入金+リース負債から現預金を引いた値で、MBOで生じたのれん19,187百万円を含む。MonotaROは事業投下資本ベースのROICを算出していない(自己資本+有利子負債を分母とし現預金を含む独自推計ROICは23.5%)。定義が揃っていないため、事業ROICの企業間の大小は目安にとどまる。ROEとROICは分子(当期純利益と税引後営業利益)も異なり、両者の差は余剰資金の大きさに加え、営業外損益や税率の違いも含む。

出典: オービック 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(セグメント資産・営業利益) (2026-10-17参照) / オービック 有価証券報告書 第59期(2026年3月期)(ROE) (2026-10-17参照) / キーエンス 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ディスコ 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ディスコ 有価証券報告書 第87期(2026年3月期)(ROE) (2026-10-17参照) / MonotaRO 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(ROE) (2026-10-17参照) / ベイカレント 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照) / ベイカレント 有価証券報告書 第12期(2026年2月期) (2026-10-17参照)

会社全体のROE(会社開示)と、事業に投じた資本に対するROIC(独自推計)を並べると、両者の開きが会社によって大きく異なることが分かります。開きが特に大きいのは、多額の余剰資金を持つオービックとキーエンスです。ベイカレントも事業ROIC(約73.7%)がROE(35.8%)の約2倍あり、今回の資本政策の変更(手元資金の上限引き下げ)は、この差を縮める方向に働くと考えられます(独自の解釈)。ディスコは開きが最も小さく、事業に投じた資本の比重が大きいことを反映しています。

事業ROICの分母の定義は会社ごとに異なり(「分析の前提と出典」を参照)、MonotaROは算出していません。企業間の大小は目安として読んでください。

資本効率の源泉の違い

詳細分析

成長の中身:利益率の上昇か、人員の拡大か

直近4年間の売上高の年平均成長率は、オービック10.9%、キーエンス11.5%、ディスコ14.5%、MonotaRO15.2%、ベイカレント26.7%でした(実績から独自計算)。営業利益の年平均成長率は、オービック13.2%、キーエンス9.3%、ディスコ19.2%、MonotaRO17.6%、ベイカレント24.0%です。

なお、ベイカレントの4期前(2022年2月期)は単体、直近(2026年2月期)は連結の数値です。2024年9月の持株会社体制への移行に伴う切り替えで、事業内容は同じため系列を接続していますが、厳密には会計主体が異なります。

再投資と余剰資金の使い道

稼いだ現金の行き先は、5社で大きく分かれています。

企業営業CFに対する再投資の比率(直近通期、独自計算)余剰資金・資本政策の方針
オービック約3.1%(有形・無形固定資産の取得2,286百万円÷営業CF73,746百万円)2027年3月期に総還元性向110.7%を計画(会社予想)。上限500億円の自己株式取得を実施中
キーエンス約6.6%(有形固定資産の取得28,371百万円÷営業CF430,680百万円)約3兆円の金融資産。成長投資を「あらかじめ検討枠を設けることなく」最優先とし、M&Aは「時期や金額規模にとらわれることなく」検討する方針(2026年4月)。配当は簡易FCFの約27%
ディスコ約26.3%(有形固定資産の取得35,143百万円÷営業CF133,543百万円)余剰資金の3分の1を追加配当に回すルール。郷原工場(総額35,900百万円)と羽田R&Dセンター(同12,800百万円)を自己資金で建設予定
MonotaRO約35.4%(有形固定資産の取得11,938百万円÷営業CF33,726百万円)水戸物流センター(504億円)を自己資金と借入金で賄う。配当性向50%以上を目安とし、2026年上期に100億円の自己株式を取得
ベイカレント投資CFの支出が営業CFの約17.3%(6,508百万円÷37,616百万円、貸付けによる支出2,300百万円を含む)。人材への投資は主に費用として計上手元資金の上限を予想売上収益の約25%に引き下げ、超過分をM&A・主要顧客との資本取引・自社株買いに配分(2026年10月)

余剰資金の圧縮は会社全体のROEを押し上げる一方、M&Aなどの新しい投資が事業の高いROICを下回るリスクもあります。オービックでは、保有株式の評価差額(その他有価証券評価差額金、2026年3月期末144,415百万円)が純資産を押し上げ、自社株買いを進めてもROEが上がりにくい構造もあります。

業績の振れやすさと主なリスク

企業成長を支える主な要因主なリスク
オービック大手企業の開拓(SI)と、運用・保守・クラウド(SS)の積み上げ生成AIや低価格クラウドERPによる導入需要の変化、人材確保、投資有価証券の時価変動
キーエンス海外直販の拡大、半導体・電機向けの需要製造業の設備投資サイクル、為替、余剰資金の使い道
ディスコ生成AI向けHBM・先端ロジックのチップ薄化・積層化半導体サイクル、売上の約3割を占める中国向けへの規制、特定顧客への集中(TSMC向けが売上の11.0%)
MonotaRO大企業向けエンタープライズ事業の拠点浸透、新規顧客獲得一時需要の反動、水戸物流センターの償却負担と立ち上げ
ベイカレントAI関連・サイバーセキュリティ関連の需要、人員拡大生成AIによるコンサル需要の代替、採用・定着、新資本政策でのM&A

オービックとMonotaROは継続的な購買・保守契約が中心で、業績が比較的安定してきました。キーエンスとディスコは顧客の設備投資に連動し、キーエンスは2024年3月期に営業利益が前期比−0.8%となり、ディスコは同期に7,530百万円の減損損失を計上しました(実績)。ベイカレントは景気後退時に顧客がコンサル予算を絞るリスクがあります。

現在の市場評価(参考)

2026年10月16日終値ベースのPERは、オービック約30.2倍(会社予想EPS)、キーエンス約44.0倍(実績EPS)、ディスコ約43.1倍(実績EPS)、MonotaRO約32.9倍(会社予想EPS)、ベイカレント約31.5倍(会社予想EPS)でした(各記事の独自計算)。キーエンスとディスコは通期の業績予想を開示していないため、実績EPSで計算しています。

キーエンスは、時価総額から金融資産を差し引いても本業の税引後営業利益の約39.7倍で評価されています(独自計算)。ベイカレントの株価は、2026年2月24日の年初来安値3,780円から10月16日の10,195円まで、8か月弱で約2.7倍に動きました。市場が「AIはコンサル需要を増やすのか、減らすのか」にまだ答えを持っていないことを示していると考えます(独自の解釈)。ディスコの評価指標は、2026年10月22日予定の決算で更新が必要です。

確認できた事実と未検証の仮説

オービック

キーエンス

ディスコ

MonotaRO

ベイカレント

業界の構造変化

1. 生成AIが需要を増やすのか、代替するのか

生成AIは5社すべてに関わりますが、向きが異なります。ディスコでは生成AI向けの半導体投資が直近の成長要因になっており、キーエンスもアジアの半導体・電機向けの伸びを説明しています。ベイカレントでは上期売上の50〜60%がAI関連でした(会社開示)。一方、オービックのERP導入やベイカレントのコンサルティングは、AIが業務の一部を代替した場合に需要や単価が下がる可能性があります。ベイカレントの株価は2026年2月に「AIによる代替」への懸念から大きく下がりました。MonotaROもAIエージェントのβ版を公開しており(2026年4月)、購買のしかたが変わる可能性があります。AIによる追い風と逆風の両方を、四半期ごとの受注・案件数・1人当たり売上で確認していく必要があります。

2. 人材の確保が成長の上限になる

オービック、キーエンス、ベイカレントは、人員の採用・育成ペースが成長の制約になりうるとしています。特にキーエンスとベイカレントは、人員と利益(売上)がほぼ同じ比率で伸びてきたため、人材獲得競争と人件費の上昇が、利益率と成長の両方に直接影響します。

3. 製造業の設備投資と半導体サイクル

キーエンスとディスコは製造業、特に半導体関連の設備投資の影響を強く受けます。MonotaROも顧客の多くが製造業です(単体のエンタープライズ事業では製造業が53%)。生成AI向けの投資が続くかどうかと、それ以外の製造業の設備投資が回復するかどうかは、3社の成長率を左右する共通の変数です。

4. 金利の上昇と、手元資金の利回り

キーエンスの受取利息は、2024年3月期の5,358百万円から2026年3月期の16,249百万円に増えました(実績)。金利の上昇は余剰資金の利回りを高めますが、それでも2026年3月期の営業利益の約2.7%にあたる規模です(独自計算)。手元資金の利回りが事業ROICに遠く及ばない状況は変わらず、余剰資金を持ち続けることの資本効率上の負担は残ると考えます(独自の解釈)。

次の決算で確認する事項

オービック(2027年3月期 第2四半期)

キーエンス(2027年3月期 第2四半期、2026年10月下旬予定)

ディスコ(2027年3月期 第2四半期、2026年10月22日予定)

MonotaRO(2026年12月期 第3四半期)

ベイカレント(2027年2月期 第3四半期)

分析の前提と出典

選定基準と中心企業

次の条件をすべて満たすことを確認した企業を、中心企業として掲載しています。

  1. 資本効率が長期にわたり高水準であること:直近4〜5期のROE(会社開示)または独自推計ROICが継続して高い水準にあること。
  2. 利益成長が続いていること:直近4年間で営業利益が年率で一桁後半以上伸びていること。
  3. 再投資の余地があること:生み出した営業キャッシュ・フローを、人員・物流・生産能力・新製品などの事業に再投資する対象が開示から確認できること。
  4. 直近期まで黒字であること:直近通期と、その後の四半期(中間期)決算で営業黒字であること。

5社とも4つの条件を満たしますが、当てはまり方には差があります。キーエンスの営業利益の年平均成長率(9.3%)は条件2の下限に近く、オービックの事業ROIC(約94%)は直近1期分の概算のため、条件1は会社開示のROICとROEで確認しています。MonotaROは事業投下資本ベースのROICを算出しておらず、条件1はROEで確認しています。業種の偏りを避けるため、ソフトウェア、FA機器、半導体製造装置、ネット通販、コンサルティングと、ビジネスモデルの異なる企業を選んでいます。掲載は総合的な優劣や順位を示すものではありません。

決算期と数値の扱い

指標の定義と会計上の注意

詳細比較表

掲載5社の利益率・成長率・資本効率(各社の直近通期)単位: %
オービック(4684)キーエンス(6861)ディスコ(6146)MonotaRO(3064)ベイカレント(6532)
営業利益率(直近通期)65.7(計算)51(計算)42.3(計算)13.8(計算)34.3(計算)
営業利益率(4期前)60.5(計算)55.4(計算)36.1(計算)12.7(計算)37.3(計算)
売上高の年平均成長率(4年間)10.9(計算)11.5(計算)14.5(計算)15.2(計算)26.7(計算)
営業利益の年平均成長率(4年間)13.2(計算)9.3(計算)19.2(計算)17.6(計算)24(計算)
ROE(直近通期・会社開示)15.813.525.128.735.8
ROIC(分母に現預金などを含むベース)16.812(推計)—23.5(推計)30.6(推計)
ROIC(事業に投じた資本ベース)94(推計)72.2(推計)39.1(推計)—73.7(推計)

実績を含みます。「計算・推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です

注: 直近通期はオービック・キーエンス・ディスコが2026年3月期、MonotaROが2025年12月期、ベイカレントが2026年2月期(IFRS、売上収益)。4期前はそれぞれ2022年3月期、2021年12月期、2022年2月期で、営業利益率と年平均成長率は決算短信の数値から当メディアが計算した。ベイカレントの4期前(2022年2月期)は単体、直近(2026年2月期)は連結の数値で、2024年9月の持株会社体制移行に伴う切り替え(事業内容は同じ)。会計基準・決算期が異なるため、厳密な横比較ではない。ROICは会社ごとに定義が異なり、同じ行の中でも横並びで優劣を比べる数値ではない。「分母に現預金などを含むベース」:オービックは会社開示値(税引後営業利益÷(株主資本+有利子負債))、キーエンスは税引後営業利益÷期末純資産、MonotaROは税引後営業利益÷(期末自己資本+有利子負債)、ベイカレントは税引後営業利益÷(期末の親会社所有者帰属持分+借入金+リース負債)。ディスコは算出していない。「事業に投じた資本ベース」:オービックはセグメント資産合計を分母にした概算(約94%)、キーエンスとディスコは売上債権・棚卸資産・有形/無形固定資産から仕入債務(ディスコは契約負債も)を引いた事業投下資本、ベイカレントは上記の投下資本から現預金を引いた値。MonotaROは算出していない。各社の計算の詳細は個別企業の記事とグラフ注記を参照。

出典: オービック 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / オービック 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / オービック 2026年3月期 決算説明会資料(ROIC) (2026-10-17参照) / オービック 有価証券報告書 第59期(2026年3月期) (2026-10-17参照) / キーエンス 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / キーエンス 2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ディスコ 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ディスコ 2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / ディスコ 有価証券報告書 第87期(2026年3月期) (2026-10-17参照) / MonotaRO 2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / MonotaRO 2021年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (2026-10-17参照) / MonotaRO 2025年12月期 決算概要(法人税等税率) (2026-10-17参照) / ベイカレント 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照) / ベイカレント 2023年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結) (2026-10-17参照) / ベイカレント 有価証券報告書 第12期(2026年2月期) (2026-10-17参照)

出典

本ページの数値は、以下の一次資料を参照した各社の個別企業分析に基づきます。各社記事の出典も併せて参照してください。

中心企業

株式会社オービック(4684)

分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-07-22

株式会社キーエンス(6861)

分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-07-28

株式会社ディスコ(6146)

分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-07-23

株式会社MonotaRO(3064)

分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-10-13

株式会社ベイカレント(6532)

分析日: 2026-10-17 / データ基準日: 2026-10-15

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