株式会社ベイカレント(6532)
この記事の要点
- 業界を限定しない総合コンサルティングファームで、2026年2月期の営業利益率は34.3%、ROEは35.8%でした(実績)。現預金を除いた投下資本に対するROICは約73.7%と推計され、事業に必要な資本はごく小さい構造です(独自推計)。
- 過去4年の売上収益の伸び(年率約26.7%)は、従業員数の伸びとほぼ同じでした。成長は主に人員の拡大によるもので、2027年2月期上期は採用・育成費用の増加で営業利益率が32.2%(前年同期34.0%)に下がりました。
- 2026年10月に新中計(2031年2月期に売上5,000億円)と、手元資金の上限を予想売上収益の約25%に引き下げる資本政策を公表しました。AIが需要を増やすか代替するかと、M&Aを含む新しい資本の使い方が今後の焦点です。
テーマ「長期的に利益を積み上げる高ROIC企業」の中心企業です。
本記事の財務数値は、特記がない限りIFRS・百万円単位(百万円未満四捨五入)です。決算期は2月末で、本記事の「FY2026」は2026年2月期(2025年3月1日〜2026年2月28日)を指します。会社は2026年10月公表の資料から期首年表記に切り替えており、会社資料の「FY2026」は2027年2月期を指します。 会社資料と1年ずれる点にご注意ください。FY2022〜FY2024は単体(非連結)、FY2025以降は連結の数値です(2024年9月の持株会社体制への移行に伴うもので、事業内容は同じです)。文中では 実績(開示された数値)、会社予想(会社が公表した計画・見通し)、独自推計(当メディアが開示数値から計算したもの)を区別して書いています。
要点の詳細
- 企業の質:業界を限定しない総合コンサルティングファームで、戦略立案から実行支援までを手がけます。FY2026の営業利益率は34.3%、ROEは35.8%です(いずれも実績)。当メディアの独自推計によるROICは、FY2023〜FY2026に30〜36%で推移しました。
- 成長余地:FY2022からFY2026までの4年間で、売上収益は年率約26.7%、営業利益は年率約24.0%で伸びました(実績から独自計算)。2027年2月期上期(FY2027上期)は売上収益+35.7%、営業利益+28.5%(実績)で、四半期の伸びは加速しています。会社は2026年10月15日に新しい中期経営計画を公表し、2031年2月期に売上5,000億円・EBITDAマージン40%を掲げました(会社目標)。
- 足元の論点:上期は売上が加速した一方、採用・育成費用で販管費が+65.9%増え、営業利益率は34.0%から32.2%に下がりました。会社は下期に利益率が上がると説明しています。
- 市場評価:2026年10月16日終値は10,195円で、会社予想EPSに対するPERは約31.5倍、PBRは約14.6倍です(独自計算)。株価は「AIがコンサルティングを代替する」との懸念から2026年2月24日に3,780円まで下がった後、決算と新中計の発表翌日に前日比で大幅に上昇しました。評価の振れ幅が大きい銘柄です。
- 主なリスク:生成AIによるコンサルティング需要の代替・単価下落、人材の採用・定着の失敗と稼働率の低下、採用先行による利益率の低下、新しい資本政策でM&Aや資本取引が加わることによる資本効率の変化です。
- 確認できた事実:FY2022〜FY2026に営業利益率34%以上、ROE35.8〜44.2%を保ちながら、人員とともに売上収益を年率約26.7%で伸ばしてきました(実績)。
- 未検証の仮説:生成AIが普及した後も「人員を増やせば売上が伸びる」構造が続き、新中計の年率25〜30%成長を5年続けられること。稼働率の最新値は定量的に確認できておらず、AI関連の需要が今後3〜5年続くという見方も会社の見通しです。
事業概要・ビジネスモデル
ベイカレントは、さまざまな業界の大手企業に対し、戦略・デジタル・オペレーションなどの幅広いテーマを支援する総合コンサルティングファームです(有価証券報告書)。セグメントはコンサルティング事業の単一です。1998年創業の旧ベイカレント・コンサルティングを起源とし、2014年のMBOを経て2016年に上場、2024年9月に持株会社体制へ移行して現在の社名になりました。事業は完全子会社の株式会社ベイカレント・コンサルティング(FY2026売上高147,111百万円)とベイカレント・テクノロジーが担っています。
収益の仕組みは、コンサルタントをプロジェクトに配置し、その稼働に対してフィーを受け取ることです。売上はおおむね「コンサルタント数 × 稼働率 × 1人当たり単価」で決まり、主な費用はコンサルタントの人件費です。会社は特徴として次の点を挙げています(有価証券報告書・会社資料)。
- ワンプール制:業界やサービスごとに組織を縦割りにせず、案件ごとに横断的にチームを組成する
- 独立系:特定の企業グループや系列に属さず、ニュートラルな立場から提案できる
- 戦略から実行まで:トップマネジメントの意思決定支援から、デジタル技術を使った業務改革の実行支援まで一貫して行う
顧客は各業界の大手企業と政府機関です。有価証券報告書では、売上の10%以上を占める販売先はないとされています(FY2025・FY2026)。
FY2027上期の売上のうち、AI関連が全体の50〜60%、**サイバーセキュリティ・防衛関連が約10%**を占めたと会社は開示しています(2027年2月期上期決算補足説明資料)。会社は、サイバーセキュリティ・防衛関連の比率が2028年2月期にかけて約20%に向かうと見込んでいます(会社見通し)。
売上・利益・CFの構造
実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)
注: IFRS。期は決算期末の年で表記(FY2026=2026年2月期)。会社は2026年10月以降の資料で期首年表記(2027年2月期=FY2026)に変更しているため、会社資料とは1年ずれる。FY2022〜FY2024は単体(非連結)、FY2025以降は連結(2024年9月の持株会社体制移行に伴う)。事業内容は同一で、連結子会社はコンサルティング事業を担う完全子会社2社。FY2027は2026年4月14日公表の会社予想(2026年10月15日時点で修正なし)。
出典: 有価証券報告書 第12期(2026年2月期)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照) / 2023年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結) (2026-10-17参照) / 2024年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結) (2026-10-17参照) / 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照) / 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照)
売上収益はFY2022の57,642百万円から、FY2026の148,332百万円に増えました(実績)。前期比の伸び率は、FY2023が+32.0%、FY2024が+23.4%、FY2025が+23.6%、FY2026が+27.8%です。FY2027の会社予想は190,000百万円(+28.1%)で、2026年10月15日時点で修正されていません。
実績・会社予想・会社目標を含みます(薄色・点線は実績以外)
注: 営業利益率=営業利益÷売上収益(小数第2位を四捨五入)。FY2022〜FY2026は決算短信記載の売上収益営業利益率(37.3/39.3/36.4/36.7/34.3%)と一致。FY2027は会社予想(売上収益190,000百万円、営業利益64,800百万円)から算出。FY2022〜FY2024は単体、FY2025以降は連結。期は決算期末の年で表記(FY2026=2026年2月期)。
出典: 2023年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結) (2026-10-17参照) / 2024年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結) (2026-10-17参照) / 2025年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照) / 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照) / 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照)
営業利益率はFY2023の39.3%をピークに、FY2026は34.3%まで下がりました(実績)。FY2026は売上総利益率が53.8%から56.6%に上がった一方、販管費が19,845百万円から33,069百万円(+66.6%)に増えました。会社は主に人件費による増加と説明しています(有価証券報告書)。会社が重視するEBITDAマージン(営業利益+減価償却費などで計算する会社定義の指標)は、FY2025の37.5%からFY2026の35.1%へ下がり、中期経営計画の目安(30〜40%)の範囲内でした。
FY2027の会社予想営業利益は64,800百万円、営業利益率は34.1%です。
FY2027上期の状況
注: 期は決算期末の年で表記(FY2027 1Q=2026年3〜5月)。会社資料は期首年表記のため、同資料の「FY25 1Q」が本グラフの「FY2026 1Q」にあたる。四半期値は会社資料の掲載値で、FY2027 1Q+2Qの合計(92,912百万円)は中間期決算短信の92,913百万円と端数処理で1百万円異なる。
出典: FY2026 上期 決算補足説明資料(2026年10月15日) (2026-10-17参照)
FY2027上期(2026年3〜8月)の実績は、売上収益92,913百万円(前年同期比+35.7%)、営業利益29,892百万円(+28.5%)でした。四半期で見ると、1Q(3〜5月)の売上は44,576百万円で前年同期比+29.9%、2Q(6〜8月)は48,336百万円で+41.5%と、伸びが加速しています(会社資料の四半期値から独自計算)。会社は、上期の主要KPIとして、案件数+25.5%、コンサルタント1人当たり売上+6.6%、コンサルタント数6,339名(+30.9%)を開示しています。
一方、上期の営業利益率は32.2%で、前年同期の34.0%を下回りました。売上総利益率は55.4%から58.3%に上がりましたが、販管費が24,327百万円(+65.9%)に増え、販管費率は21.4%から26.2%に上がりました(独自計算)。会社は「採用・育成が計画以上に進んだことで費用は計画を上振れた」としつつ、上期で先行投資が完了し、下期にかけて利益率が上がると説明しています。
通期の会社予想から上期実績を引くと、下期の計算上の売上収益は97,087百万円(前年下期比+21.6%)、営業利益は34,908百万円(下期営業利益率36.0%)です(独自計算)。2Qの売上の伸び(+41.5%)と比べると下期の計画は控えめで、会社自身も「売上・利益ともに期初ガイダンスを上回る着地を見込む」としています(会社見通し。業績予想の数値は修正していません)。
成長の分解:人員と1人当たり売上
実績・シナリオを含みます(薄色・点線は実績以外)。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です
注: 従業員数は就業人員(期末)。FY2022〜FY2024は単体、FY2025以降は連結。1人当たり売上収益=売上収益÷期末従業員数(当メディアの独自計算、小数第2位を四捨五入)。期中に採用が多い年は期末人数が期中平均を上回るため、1人当たり売上は低めに出る。従業員数にはコンサルタント以外(本社部門、研修中の新卒社員など)を含む。
出典: 有価証券報告書 第12期(2026年2月期)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照)
期末の従業員数は、FY2022の2,638名からFY2026の6,788名へ、4年で約2.6倍になりました(実績)。この間の年率は約26.7%で、売上収益の伸び(年率約26.7%)とほぼ同じです。期末人数で割った従業員1人当たり売上収益は、FY2022とFY2026がともに約21.9百万円でした(独自計算)。
これまでの成長は、主に人員の拡大によってもたらされたと読めます(独自の解釈)。ただし、期末人数ベースの計算は期中の採用増を反映しないため、1人当たり売上を低めに見せる点に注意が必要です。会社は、コンサルタント1人当たり売上がFY2027上期に前年同期比+6.6%増えたと開示しており、単価や案件の質の改善も始まっている可能性があります。
キャッシュ・フロー
実績・シナリオを含みます(薄色・点線は実績以外)。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です
注: 簡易FCFは営業CFと投資CFの単純合計(当メディアの独自計算)。FY2026の投資CFには貸付けによる支出2,300百万円を含む。FY2022〜FY2024は単体、FY2025以降は連結。期は決算期末の年で表記(FY2026=2026年2月期)。
出典: 有価証券報告書 第12期(2026年2月期)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照) / 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結) (2026-10-17参照)
営業キャッシュ・フローはFY2022の16,018百万円からFY2026の37,616百万円に増えました(実績)。コンサルティング業は大きな設備投資を必要とせず、投資キャッシュ・フローはFY2026でも6,508百万円の支出にとどまります(うち貸付けによる支出2,300百万円)。営業CF+投資CFで見た簡易FCF(独自計算)は、FY2026で31,108百万円、当期利益37,840百万円の約82%でした。売上の伸びに伴って売上債権が増えるため(FY2026は11,434百万円の増加)、利益の一部が運転資本に吸収されます。
ROIC・資本効率
実績・シナリオを含みます(薄色・点線は実績以外)。「推計」の注記は開示値そのものではなく当サイトの推計・計算による値です
注: ROEは有価証券報告書・決算短信の開示値。ROICは当メディアの独自推計:営業利益×(1−実効税率)÷期末投下資本。実効税率=法人所得税費用÷税引前利益(FY2023 26.7%、FY2024 25.7%、FY2025 27.7%、FY2026 25.8%)。投下資本=親会社所有者帰属持分+借入金+リース負債(期末、現預金を控除しない)。FY2026:50,931×(1−25.8%)≒37,798 ÷(117,038+262+2,512+3,801=123,613)。FY2022は財政状態計算書の内訳を一次資料で未確認のため算出せず。FY2022〜FY2024は単体、FY2025以降は連結。
出典: 有価証券報告書 第12期(2026年2月期)主要な経営指標等の推移 (2026-10-17参照) / 2024年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結)財政状態計算書 (2026-10-17参照) / 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結)財政状態計算書・損益計算書 (2026-10-17参照)
ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)は、FY2022の43.3%、FY2023の44.2%から、FY2026の35.8%まで緩やかに下がりました(開示値)。利益の積み上がりに対して、自己資本(主に現預金)の増え方が上回ったためと考えられます。
会社はROICを開示していないため、当メディアで推計しました(独自推計)。税引後営業利益(営業利益×(1−実効税率))を、期末の投下資本(親会社所有者帰属持分+借入金+リース負債)で割った値は、FY2023が35.7%、FY2024が30.3%、FY2025が30.1%、FY2026が30.6%です。FY2026の内訳は次のとおりです。
- 税引後営業利益:50,931 ×(1 − 25.8%)≒ 37,798百万円
- 投下資本:持分117,038 + 借入金262 + リース負債6,313 = 123,613百万円
この推計の分母には、現預金72,308百万円(FY2026末)と、2014年のMBOで生じたのれん19,187百万円が含まれます。現預金を差し引いた投下資本(51,305百万円)で計算すると、ROICは約73.7%になります(独自推計)。事業そのものが必要とする資本はごく小さく、ROICの水準は主に「手元資金をどれだけ持つか」で決まる構造です(独自の解釈)。
この点で、2026年10月15日の資本政策の変更は資本効率に直接関わります。会社は、毎年確保する手元資金の上限を「予想売上収益の約40%」から「約25%(約3か月分の運転資金)」に引き下げ、それを超える資金を成長投資と自社株買いに機動的に配分する方針に変えました。新中計では、ROEを2031年2月期に約80%へ高める目標も示しています(会社目標)。
競争優位と競争環境
競合は、外資系の総合コンサルティングファームやITコンサルティング会社、国内系のシンクタンク・コンサルティング会社です(独自の整理)。当メディアは、ベイカレントの競争優位の源泉を次の3点に整理します。
- 高い利益率を生む運営モデル:ワンプール制で業界をまたいでコンサルタントを配置できるため、特定業界の需要が落ちても人員を他の案件に回しやすく、稼働率を保ちやすいと会社は説明しています。会社は、稼働率(コンサルタントのうちプロジェクトに参画している人数の割合)を高い収益性の前提として重視しており、2024年2月期の決算短信では稼働率が年間平均80%台後半で推移したと開示しています。営業利益率30%台は、上場コンサルティング会社の中でも高い水準と考えられます(独自の解釈。同業他社との厳密な比較は行っていません)。
- 大手企業との継続的な関係:会社は「コアクライアント戦略」として、CxO(経営幹部)とのリレーションと全社的な長期支援を重視しています。新中計では、2036年2月期に売上計画の約50%を長期契約のバックログで賄う目標を掲げています(会社目標)。
- 採用・育成の仕組み:新卒と中途の両方で大量採用を続けながら、FY2022〜FY2026に営業利益率34%以上を保ってきました(実績)。FY2027には1Qに約710名の新卒社員(事務スタッフを含む)が入社し、2Q〜3Qに約550名をコンサルタントとして配属する計画です(会社資料)。
一方、競争環境には逆風もあります。会社自身が、コンサルティング業界で人材の争奪が激しく、経験者採用の費用や人件費が上がっていると説明しています(有価証券報告書)。また、2026年2月には、AIが既存のサービスを代替するとの見方から国内のソフトウエア関連株が売られ、ベイカレントの株価も一時ストップ安となりました(日本経済新聞)。
成長ドライバーと市場規模
会社は、国内の大手企業と政府機関が、専門性と実行力を持つ外部パートナーへの依頼を増やしていると見ています(会社資料)。会社が挙げる需要は次のとおりです。
| 領域 | 会社が挙げる主な支援内容 | 上期売上に占める比率(会社開示) |
|---|---|---|
| AI関連 | データ基盤整備、AIユースケース創出・全社展開、AI導入に伴う業務改革 | 50〜60% |
| サイバーセキュリティ・防衛関連 | 金融機関のリスク評価・脆弱性診断、防衛装備品の生産能力増強・調達・サプライチェーン | 約10% |
| その他 | エネルギー、半導体、データセンター、フィジカルAI など | — |
会社は、国内大手企業の大規模なAI投資計画(金融・通信・自動車など)を例に挙げ、AI関連の需要が今後3〜5年にわたって続くと見込んでいます(会社見通し)。コンサルティング市場全体の規模について、会社は数値を示していません。当メディアも一次資料で確認できた市場規模の数値がないため、ここでは記載しません。
新中期経営計画(2026年10月15日公表)
会社は、現中計の目標(2029年2月期に売上2,500億円、EBITDAマージン30〜40%)を約1年前倒しで、2028年2月期中におおむね達成できる見込みとしたうえで、新しい計画を公表しました(会社目標)。
| 項目 | 2027年2月期(会社予想) | 2031年2月期(新中計) | 2036年2月期(長期計画) |
|---|---|---|---|
| 売上 | 1,900億円 | 5,000億円 | 1兆円 |
| EBITDA | 665億円 | 2,000億円 | 4,500億円 |
| EBITDAマージン | 35% | 40% | 45% |
| EPS | 323.79円 | 約1,000円 | 約2,500円 |
2027年2月期の会社予想190,000百万円から2031年2月期の5,000億円までは、年率約27.4%の成長が必要です(独自計算)。会社は年率25〜30%と説明しています。過去4年の実績(年率約26.7%)と同程度のペースを、規模が大きくなった後も続ける計画です。新中計の施策には、社内AI活用による1人当たり創出価値の向上、AIを使った包括支援や成果連動型の契約、国内大手企業の海外展開支援(2036年2月期に海外売上比率約20%)が含まれます。
なお、会社資料には想定PERを用いた時価総額の試算も掲載されていますが、本記事ではこれを評価の根拠として用いません。
経営者・資本政策
代表取締役会長兼社長は阿部義之氏です(決算短信)。会社は監査等委員会設置会社です(有価証券報告書)。
株主還元の方針は次のとおりです(2026年10月15日「株主還元の基本方針の一部変更」)。
- 配当:IFRSベースの配当性向40%を目安とする(変更なし)。1株当たり配当はFY2025の62円、FY2026の100円から、FY2027は130円(中間65円、期末65円)の予想
- 手元資金:毎年確保する水準を予想売上収益の約25%に一本化(従来は最大約40%)
- それを超える資金:オフィスなどの設備投資、ケイパビリティ獲得のためのM&A、主要顧客との資本取引(JVなど)、海外支援体制の構築といった成長投資と、自社株買いに機動的に配分する。自社株買いは毎年の余剰資金に加え、投資機会や株価水準を踏まえて機動的に追加する
この方針に先立ち、会社は2026年3月に上限300億円・660万株の自己株式取得を決議し、2026年4〜7月に29,998百万円分を取得しました。取得した株式は消却され、発行済株式総数は155,411,410株から150,227,210株に減りました(実績)。FY2027上期は、自己株式の取得(30,031百万円)と配当(7,591百万円)の支出が営業CF(22,195百万円)を上回り、現預金は72,308百万円から54,483百万円に減りました。2026年8月末時点で借入金はゼロです。
予想売上収益の約25%(190,000百万円×25%=47,500百万円)を基準とすると、8月末の現預金はその水準に近づいています(独自計算)。今後は、下期以降に生み出すFCFが、成長投資と自社株買いの主な原資になると考えられます。
注目点は、成長投資の対象にM&Aと主要顧客との資本取引が明記されたことです。これまでのベイカレントは自前の採用・育成で成長してきました。今後、買収や出資にどの程度の資金を振り向け、その投資でどの程度のリターンを上げるかが、高いROICを維持できるかを左右すると考えます(独自の解釈)。
将来シナリオ(条件付き)
以下は、当メディアによる条件付きの見取り図です。将来を予測するものではありません。
| シナリオ | 前提条件 | 想定される姿 |
|---|---|---|
| 上振れ | AI関連と防衛・サイバーの需要が拡大し、採用ペースを保ったまま社内AI活用で1人当たり売上が上がった場合 | 人員増と単価上昇の両方で年率25%超の売上成長が続き、EBITDAマージンが新中計の40%に向けて上がる。手元資金の圧縮でROEも上昇する |
| 基本 | 需要は堅調だが、採用コストの上昇とAIによる作業の効率化が単価に一部影響した場合 | 売上成長率は20%前後に落ち着き、営業利益率は30%台前半〜半ばで推移する。新中計の売上目標の達成時期は後ずれする |
| 下振れ | 生成AIの普及で調査・資料作成などの作業がコンサルタントに依頼されなくなり、同時に大手企業がIT・コンサル予算を絞った場合 | 稼働率と単価が同時に下がり、大量採用した人員の固定費が利益率を押し下げる。M&Aや資本取引が期待どおりの成果を上げない場合、ROICも低下する |
現在の市場評価との比較
2026年10月16日の終値は10,195円でした(Yahoo!ファイナンス)。この株価をもとにした指標は次のとおりです(独自計算)。
| 指標 | 値 | 計算の前提 |
|---|---|---|
| 時価総額(自己株式を除く) | 約1兆4,985億円 | 2026年8月末の発行済株式数150,227,210株から自己株式3,243,175株を引いた株数 |
| PER(会社予想ベース) | 約31.5倍 | FY2027の会社予想EPS 323.79円 |
| PER(実績ベース) | 約40.9倍 | FY2026の実績EPS 249.16円 |
| PBR | 約14.6倍 | 2026年8月末の親会社所有者帰属持分102,304百万円から算出した1株当たり持分 約696.0円 |
| 配当利回り(会社予想) | 約1.3% | FY2027の予想配当130円 |
会社予想ベースのPER約31.5倍は、益回りに直すと約3.2%です。市場は、ベイカレントが今後も長期にわたって20%を超える利益成長を続けることを、かなりの程度織り込んでいると読めます(独自の解釈)。PBRが14倍を超えるのは、ROEが30%台後半と高いことの裏返しでもあります。
ただし、市場の評価は大きく揺れています。株価は2026年2月24日に年初来安値3,780円をつけ(日本経済新聞はAIによる代替への懸念を背景と報じています)、決算と新中計を公表した翌日の10月16日には前日比で大幅に上昇し、終値は10,195円となりました(Yahoo!ファイナンス)。同じ会社の評価が8か月弱で約2.7倍に動いたことは、市場が「AIはコンサル需要を増やすのか、減らすのか」という問いにまだ答えを持っていないことを示していると考えます(独自の解釈)。
主要リスクと反証条件
| リスク | 内容 | 反証・警戒シグナル |
|---|---|---|
| 生成AIによる需要の代替 | 調査・分析・資料作成などの作業がAIで代替され、コンサルタントの稼働や単価が下がる | 案件数の伸びが人員の伸びを下回る状態が続く。コンサルタント1人当たり売上が前年比マイナスになる |
| 人材の採用・定着 | 業界内の人材争奪で採用が計画どおり進まない、または優秀な人材が流出する(有価証券報告書の事業等のリスク) | コンサルタント数の前年比伸び率が20%を下回る。採用関連費用の増加で営業利益率が30%を下回る |
| 採用先行による利益率低下 | 大量採用した人員の稼働が遅れると、人件費が先行する | 下期の営業利益率が上期(32.2%)を下回る。通期の営業利益率が2期続けて低下する |
| 需要の集中 | 上期売上の50〜60%がAI関連に集中している。顧客は大手企業が中心で、景気悪化時にIT・コンサル投資が絞られる | AI関連の売上比率が大きく低下する。大手顧客の投資抑制が報じられる |
| 資本政策の変化 | M&Aや主要顧客との資本取引が加わる。買収価格が高い場合や統合が難航した場合に資本効率が下がる | 大型買収の公表と、その後の独自推計ROICの低下 |
| のれんの減損 | 2014年のMBOで生じたのれん19,187百万円(会社は減損リスクを開示) | 収益性の大幅な低下 |
当メディアの中心仮説は「人員の拡大と高い稼働率を両立させ、ROIC30%前後を保ったまま年率20%超の成長を続けられる」です。この仮説の反証条件を、2期連続で売上成長率が15%を下回り、かつ営業利益率が30%を下回ることと定義します。
出典
- 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年10月15日)(2026-10-17参照)
- FY2026 上期 決算補足説明資料(2026年10月15日)(2026-10-17参照)
- 持続的な企業価値向上に向けて(2035年に向けた成長ロードマップおよび2030年に向けた業績計画(新中計))(2026年10月15日)(2026-10-17参照)
- 株主還元の基本方針の一部変更(キャピタルアロケーション方針の変更)に関するお知らせ(2026年10月15日)(2026-10-17参照)
- 2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年4月14日)(2026-10-17参照)
- 有価証券報告書 第12期(2026年2月期)(2026年5月26日提出、EDINET)(2026-10-17参照)
- 自己株式取得に係る事項の決定及び自己株式の消却に関するお知らせ(2026年3月18日)(2026-10-17参照)
- 2025年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2025年4月10日)(2026-10-17参照)
- 2024年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結)(2024年4月12日)(2026-10-17参照)
- 2023年2月期 決算短信〔IFRS〕(非連結)(2023年4月14日)(2026-10-17参照)
- IR BANK ベイカレント(6532)IR資料一覧(2026-10-17参照)
- Yahoo!ファイナンス (株)ベイカレント【6532】株価・株式情報(2026-10-17参照、2026年10月16日終値)
- 日本経済新聞「ベイカレントの株価一時ストップ安、ソフトウエア株売り続く」(2026年2月24日)(2026-10-17参照)